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平成25年度 第1回 東京都住宅政策審議会(平成26年1月24日)における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

〈人口減少とストック縮小〉

○ 東京は2020年に人口のピークを迎え、世帯については2030年にピークを迎えるとの説明があった。東京は基本的に最先端の住宅政策を行っていると認識しているが、人口が減少、世帯が減少、都市がシュリンクしていく面からすると、東京はそれらが到来するのが遅く、その点については誰かの真似をしていく、フォロワーの立場に置かれる可能性もあるのではないか。ただし、ボリュームがかなり大きいので、相当先まで考えて手を打たなければならない。

○ 人口がピークアウトした後のストックの縮小や活用というような流通対策を相当前面に押し立てないと、過剰なストックを抱えてしまうことになる。主な取組状況に中には既存住宅流通の活性化に関する調査はあったが、既存ストックの改修など、どちらかというとストックを増やしていく政策がかなり散りばめられているような印象を受けた。また、公営住宅の建替えや耐震化を推進するという説明があったが、これらを更新していくことが現実的かということを考えたら、ストックを20年、30年で縮小していくという視点も必要ではないか。

〈住宅セーフティネット〉

○ 社会福祉審議会でも、「住宅」というより、「住まいと住まい方」という言い方をしているが、介護、福祉、医療、貧困問題も、全て居住の場を確保しないことには問題解決が始まらないということから、非常に関心が高まっている。東京は、高齢化問題では世界のトップバッターである。2020年に東京オリンピックが華やかに開催されるだろうが、一方で住宅セーフティネットの部分がアンダーコントロールであるかが問われるのではないか。

○ 都営住宅に入りたくても入れないという話を聞く。サービス付き高齢者向け住宅などもあるが家賃は高い。子育てのために広い都営住宅に越したい方も抽選でなかなか当たらない状況となっている。そんな中、都営住宅を地価の高い東京で一気に増やすことは全く出来ない、難しいことだと思っている。民間住宅との連携やその活力を引き出すような施策が必要なのではないか。

〈高齢者世帯の対応〉

○ 全国では450万戸のケアハウスが必要と言われているが、現在提供できているのは150万戸である。最大の問題は東京であると予測されているが、この問題にどう対応していくかは大きな問題だろう。東京都でもサービス付き高齢者向け住宅の供給を進めているが、今後の見通しはどうなっているのか。また、現マスタープランの中でどうなっているのか。

○ もっと都民の身近な形でのアフォーダブルハウジング(公営住宅)の政策議論が必要ではないか。高齢者先進都市である東京でどういった形で政策的に打ち出していくのか検討してほしい。

〈子育て世帯の対応〉

○ 子育て世帯のことを念頭に入れる必要がある。小学校区よりも、妊娠時や子供が産まれる時ぐらいからのコミュニティを考えた政策を考えないといけない。

○ 東京都は、今若い世帯が流入してきており、子育て世帯が多くなっている。住宅と保育施設は親和性があると思っており、住宅が保育の場になっていくことも考えられる一方で、子供が育つ環境としてどうなのかという考えもある。子供が育つ環境と併せて住宅のあり方も考えたほうがよいと思う。

〈福祉政策との連携〉

○ 高齢化のスピードを考えると、住宅の中に例えば介護の拠点をつくるということを先行してやっていかないと間に合わない。高齢者専用のケア付きの住宅の建替え等は当然に必要だが、そのスピードは高齢化のスピードにとても追いつかない。現在、都営住宅の中に、介護の拠点をつくることは難しいと思うが、積極的にそういうものをつくることや、在宅のための看護や医療、あるいは介護のための施設として利用できるような方向性を打ち出していくことを議論してもらいたい。

○ 介護と仕事の問題が今後重要な課題になってくるのではないか。労働人口が減り、また、高齢化に伴い、働き盛りの方が親を介護しながら仕事をしていく。中には、介護と仕事の選択を迫られている状況がある。仕事を続けていくにあたり、介護をどうやっていくか。住宅政策に介護を柱にしていく。複合的に特別養護老人ホームからサービス付き高齢者向け住宅まで、その中間も含めて一体で整備している事例がある。今後、オリンピックを目指して、まちの更新が加速される中、身近にこうしたサービスを受けられるような住宅政策を考えていく必要がある。市町村だけでなく、他県から学ぶというところもある。先進的な事例を調べてもらいたい。

〈空き家・空き家活用〉

○ 空き家、空き建物の増加に伴う利活用方策が重要となってくる。しかし、建築法規は新築を前提としているため、既存のものを活用する上では不整合がある。住宅分野と建築分野(法規等の関係で)のブリッジをどう架けていくのか議論をしていきたい。

○ スプロールしている地域の空き家は、老朽化が激しく深刻な問題となっている傾向がある。道路基盤がしっかりしているところでは比較的状態が良いということもあり、道路基盤と空き家や既存の建物の関係性について、関連づけた仕組みづくりができればと思う。

○ 今後、行き場のない高齢者が増えていくのではないか。年金暮らしでは、夫婦ではいるときは家賃を払えるが、ひとりになると払えなくなってしまう。都営住宅を増やしていくことが難しい中、空き家の活用を今後どうスピードをもって進めていくのかというところで、高齢者のホームレスの問題につながるのではないかという危機意識を持っている。

〈既存住宅流通、マンション管理等〉

○ 既存住宅流通の活性化に関して説明があったが、流通についてはマンションと戸建てではかなり異なるので、分けて考えるべきである。マンションの場合は、共用部分の管理情報の問題がある。管理情報について何か一定の書式を東京都で作っていけば、管理と流通が連携し、市場で管理の質が上がることに寄与できるではないかと考える。

○ マンションの流通について、例えば、マンションの耐震化や組合の財務状況などの情報を開示することによって、いいマンションは生き残り、そうでないものは淘汰されていくようなマーケットを利用した施策も今後考えてもらいたい。

○ マンション実態調査を行った結果、全体のマンションのストックの状況が非常にわかりやすくなったが、管理の状況についての調査を行っていない。耐震化促進のためにマンション啓発隊が個別に今年も回る予定とのことだが、その時にマンションの管理状況を、一定の様式を用いて聞き取りなどをして、まとめてもらいたい。管理状況が明らかになれば、今後の課題対応の参考になるのではないか。

○ 民間賃貸住宅については、今後、みなし仮設住宅として使われることも考えると、管理の質を上げていく必要がある。管理の質をいかに上げていくのかということを検討してもらいたい。

〈防災〉

○ 首都直下地震にどう備えるかという独立の視点があってもよい。木密地域の不燃化やマンション耐震化という形で内容的には入っているが、もう少し大きなテーマとして取組んでもらいたい。

○ 巨大地震や気象災害など、災害が起こった後の仮設住宅の整備や復興にいたるプロセスについて幾つかのシミュレーションを情報として提供してもらい、意見を出す機会があったほうがいい。供給体制やどのような備えをしておけばよいのか、災害が起こった後どうするかという観点も必要ではないか。

○ 木密の不燃化については、大変難しい問題であるが、どこにボトルネックがあるのかということを教えてもらいたい。

〈新しい住まい方〉

○ 都民の所得状況と住宅との関係がなかなか見えてこない。例えば女性のひとり暮らしなどの場合は、なかなか持ち家が持てなくて、年金などもない方も多く、最終的にはどうやって暮らしていくのか心配になる。若者の居住環境についての問題も多いと思っている。脱法ハウスと言われる違法貸しルームの問題で、いろいろな事情があるようだが、かなり劣悪な環境で暮らしている方が多く、そこが閉鎖されると、また、ネットカフェや同じような脱法ハウスに移る。国土交通省が調査を行い、技術的助言を出した。その中で、複数人がまとまって申し込む場合は住宅として認めるが、一人一人を募集する場合は寄宿舎として扱い、同じ形態の同じ部屋であっても、寄宿舎仕様としなければ使えないということに矛盾を感じる。東京都が新しい住まい方の問題、特に若者の居住という点に視点を当てた考えを示していくことも必要かと思う。

○ シェアハウスについて言うと、キーワードとして出てくるのが、既存ストックの活用と併せて、コミュニティ・マネジメントという視点である。これまでの住宅政策は、世帯単位に注目したものや、ハードのスペックに着目したものが中心であったが、これからの住宅政策を考えるときには、世帯単位だけに注目するのではなく、個々の住まいの場面や空間にどれだけ注目できるか、集まって住むというコミュニティ・マネジメントの領域からどれだけ入っていけるかということに関心を持っている。つながりのあり方が今後問われるのではないか。

〈区市町村との連携〉

○ 今回のデータでは、区や市との関係が見えてこないので、その点を整理してもらうと、各区市の実情との関連性が見えてきて、色々な提案ができるのではないか。都の役割は、仕組みづくりを行うことであり、何が不足なのかということをきちんと検討して、提案していければと思う。

○ 住宅政策審議会は、東京都全体のマクロ的な住宅政策を議論する場であるが、都内でも、23区、多摩地域、島しょ地域と多様な地域性があるので、マクロ政策の部分と地域的な課題(ミクロ政策の部分)とうまく調整をとるような議論が必要である。マスタープランでは、都営住宅はより困窮する人へシフトする方向となっており、そうなると財政的な負担が大きくなる区市町村もある。都営住宅はかなり偏在しており、都営住宅を活用してマクロ的な政策を出す場合は、区市町村の負担の軽減、全都的に負担を支える仕組み作りを考えてもらいわないと、都営住宅が多い基礎的自治体の負担が増えてしまい、有効な手だてが講じられないことにもなりかねない。是非、今後の議論で深めてほしい。

〈その他〉

○ 今回の資料で気になっているのは、全て2010年(平成22年)の国勢調査を基にしており、昨年、今年、来年の大きな変化が反映されていないという点である。団塊世代の人たちが昨年65歳になったが、2010年(平成22年)のデータでは65歳以上にカウントされていない。また、団塊ジュニアの人たちもピークの人が昨年40歳となり、住宅取得を果たした人もいる一方で、ロスト・ジェネレーションの問題などもある。今まさに変化のプロセスにあり、統計データを読み取っていく上でも、そういった視点が重要ではないか。

○ 日本の住まいのモデルというのは近隣住区論であるが、多くののまちで崩壊しつつある。コミュニティの崩壊に対して相当危機感を抱いているところがあり、高齢者問題とも絡んでいるが、新しいコミュニティモデルを高齢者が増えるといったネガティブな側面ではなく、積極的なビジョンとして議論していきたい。

○ 空き家問題と並んで、「ごみ屋敷」の問題もあり、福祉施策と連動しないと有効な手立てが打てない。空き家が増え、あるいは人は住んでいるけれども地域の住環境を悪化させるような「ごみ屋敷」があり、そこに有効な手立てが講じられないと、逆に「ごみ屋敷」の周辺の人が引っ越し、空き家が増えるといった悪循環になりかねない。福祉的な領域と住まいをどう連動していくのか議論を深めてほしい。

○ ストック管理の点から、建築行政の範疇では建築基準法10条や12条の定期報告の規定があるが、それを超えて既存ストックの状態を管理するという観点から制度的枠組みを拡充していく可能性はあるか。

○ 高齢化の進展とともに、相続が増加して、高齢者の住宅が何らかの形で流動化されるが、その数は全国では160兆円と言われている。東京都ではどのくらいなのか。

○ 都内でも地域的に問題状況がかなり異なっているので、公的住宅との分布との関係でデータを示してほしい。また、外国人対応の住宅をどう考えるべきか関連するデータを示してほしい。

【審議会終了後に提出された意見】

○ 東日本大震災以後、自然エネルギー発電の必要性を感じている。都では太陽光発電の屋根貸しマッチング事業を行っている。今年から多摩市でも事業化が予定されている。都営住宅や公社住宅でも取り組んでほしいと思っている。是非、議論してもらいたい。