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平成23年度 第1回 東京都住宅政策審議会企画部会 (平成23年6月14日)における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

(震災への備え)

○ 東京の市街地の特徴として、超高層マンションが非常に多いことが挙げられる。国でも長周期地震動に対する対策を検討しているが、都として独自の新しい施策を打ち出していくなど、都がまず突破口を開いていかないと、この問題はなかなか解決できないのではないか。

○ 超高層マンションに関して、震災時は建物そのものへの影響よりも生活への影響の方が大きいと考えられるので、防災対策として、エレベーターや電気が止まった時のために、どの程度の備蓄を行うのかなど、生活面の視点を入れることが必要ではないか。
例えば、エレベーターに万が一閉じ込められた時の対応や、トイレ等を含めた備蓄について、5層に1ヶ所備蓄を置くように指導するなど、生活面に関することへの防災対策が必要である。
それぞれのマンションによって取るべき防災対策が異なるため、一般的な防災マニュアルというものがあまり機能しないので、マンションごとに防災マニュアルを作成するに当たって、アドバイスを行っていくことが重要ではないか。

○ 「東京緊急対策2011」の中の、「都内マンションの実態を把握し、耐震化促進の ための新たな実効性ある方策を検討」とあるが、耐震補強や耐震診断の費用は、修繕積立金には通常入っていないことをデータで明確にしてもらいたいということも含め、都内マンションの実態把握調査の中身について、国で定期的に実施している「マンション総合調査」との整合性を検討したほうがよい。

○ 都や区でマンション登録制度がきちんと機能している例はまだないことから考えて、実態調査の方法をどのように行うのかについてきちんと検討することが重要である。

○ 東日本大震災で被害を受けたマンションにおいて、棟によって被害状況が異なる場合、棟別の会計を持っていないことや棟による決議ができないということによる問題が発生している。いざ地震が起こってから議論するのでは困難なため、どのような運営をしていかなければならないのか、震災に対応できる、マンション管理組合の運営マニュアルを、平常時から作成しておく必要があるのではないか。

(エネルギー対策)

○ 自然エネルギーへの転換について、国から1,000万戸の住宅に太陽光発電を設置するという話が出ている中で、都として、今回の大震災を受け、ターゲットとしてどう目標を設定し、進めていくのかということは重要であり、目標設定について十分に検討していく必要がある。

○ 経済産業省やNGOが中心となって、家庭や小規模事業者に対して様々なアク ションを始めると聞いているが、その取組と今回の「東京緊急対策2011」における「3,000人の節電アドバイザー」の取組との関係や節電アドバイザーの方がどのような方で、登録方法をどうするのかなどについて整理する必要がある。東日本大震災の後、節電に取り組む一般の方々が増えているというデータが出ているが、誤った節電により結果的に効果がないという話がよく聞かれることについて、検討が必要である。

○ 創エネ機器の導入について、例えば太陽光発電設備は、今後の技術の進歩に伴い、より性能の優れたものが将来出てくると考えられる。現在、既に設置されている機器の更新費用も併せて全体で見込んでいく必要がある。そうだとすると、例えば戸建住宅にしても、それを購入して設置するよりも、例えば、リース方式のように常に新しいものと交換できる形にしておくなど、供給とそれを運用していく仕組みを含めて考えなければ、普及も進まず、更新もできないのではないか。

○ 創エネ機器をリースシステムとして、個人所有ではなく、自治体等の持ち物として、持つことはとてもよいアイデアであるが、それをいかにしてスマートネットワークなど地域全体のエネルギーシステムとネットワークさせるかという課題も重要であると思われる。例えば、太陽光発電装置が家庭の中だけで使われるものなのか、都市全体のエネルギーの供給源と関連して使用されるものなのかなど、個別のグループだけでは対応できないような課題もあり、広く検討すべきである。

(発災時の対応)

○ 今回の震災における、いわゆる帰宅困難者の問題について、公立の小・中学校の体育館や、一部の民間マンションのホールなどを一時避難場所としていたが、そうしたことのアナウンスが、震災当日にはあまりなかった。発災時の行政の横の連携があまりうまくとれていないのではないか。情報提供が遅くならないように、消防や警察への通報など、施設開放の周知は横断的に行うべきであり、普段から非常事態における横断的な情報交換や通報システムを検討するべきである。

(被災者の受け入れ)

○ 東京都では、既に震災時における民間賃貸住宅の借上げについて協定を結んでいるが、今回の震災で、東北地方の自治体がどのように対応し、どういうやり方がスムーズだったかという内容を参考にして、実施要領を見直すべきである。

○ 震災により、東京で、住宅が大規模に被災した場合の対策として、住宅をどこ かで補充的に措置する必要がある場合、色々な自治体との連携で住み替えていく手段が必要になる。その対応策として、東京都の中だけで考えるのではなく、広域的に考える必要がある。逆に、他の地域で地震が起きたときに、東京がバックアップになるような連携の形も検討すべきである。

○ 今回の震災では、住宅を失った被災者の受け入れ対応として、一戸当たり400万円から600万円の仮設住宅を5万数千戸建設することとしている。今回の東北地方における震災対応だけでも相当な費用を仮設住宅の建設に拠出しており、それが2年経過すると廃棄処分となるか、あるいはその後の復旧・復興段階ではほとんど活用されない資源になってしまう。そう考えると、首都圏でどの程度の規模の地震災害が発生した時に、どういう手段をとると、どのくらい費用が必要となるのか、色々なシナリオを準備しておき、こういった手段は選択できる又はできないといったことを検討することが必要ではないか。首都の場合は、極めて特殊な地域であり国家財政的問題に直結する規模となることが予想されるので、過去に経験した震災後の対応の延長線上で考えていたのでは成り立たないだろう。住まいについて、復興までの間、仮設住宅に入居する段階を設けるのか又は設けずに仮住まい的な住宅をうまく回しながら、次の復旧・復興に進むようなフェーズ構成とするのかなど、色々なシナリオをたくさん用意して、検討を進める必要があるのではないか。

(被災住宅への対応)

○ 今回の震災を受け、仙台では、完全に滅失はしていないものの、余震が来ればいつ倒壊するか分からない状態となり、居住者も散り散りになって、建替えでも再建でもなく、ただ取り壊すしかない状況のマンションも見られるが、そのような場合、通常は区分所有者の全員合意がなければ、取り壊すことはできないと思うが、実際にそのような状況においてどのように対応するのか検討しておくことが必要である。

○ 現在行われている被災者生活再建支援制度など、震災に対する様々な制度は、被災した世帯や個人に対して行う仕組みになっているが、マンションが被災した場合、管理組合に対する支援が必要となるので、国や自治体も支援のあり方を検討すべきである。

(目指すべき住宅・住宅市街地に関する議論)

○ 「目指すべき住宅・住宅市街地に関する議論」、「既存ストックに関する議論」、「住宅市場に関する議論」、「住宅セーフティネットに関する議論」の4つの柱に分けているが、「高度防災都市づくりに向けた取組」ということについても分かりやすく表現した方がよいのではないか。

○ 4つの柱のうち、「目指すべき住宅・住宅市街地に関する議論」は全体を包含する目標であり、それを実現するために既存ストック、セーフティネットなどはどうあるべきかという各論の議論があるという形になるのではないか。「目指すべき住宅・住宅市街地に関する議論」の中に全て集約されていて、その中に例えば「高度防災都市づくりに向けた取組」なども各論として入ってくるのではないか。メインの部分に中心的な議論があって、各論の中でそれぞれ進めていくという形にすればよいのではないか。

○ 「目指すべき住宅・住宅市街地に関する議論」の中に目標設定がされるので、そこから、住宅・市街地像をまんべんなく整理する中で、目指すべき都市像・市街地像のような大きなテーマを謳い、その中の一つとして、高度防災都市に向けた住宅市街地づくりを目標に位置づければよいのではないか。別枠に「防災市街地」という柱を立てる必要はないと思う。

○ 審議していた最終段階で地震が起きたので、震災対策が当然のようにクローズアップされているが、住宅政策審議会でのこれまでの議論を取りまとめるとなると、これまで大きなテーマとして議論してこなかった「高度防災都市づくり」を大きな柱の一つとする必要はないのではないか。今まで議論してきた住宅政策の中には、震災対応はある程度考えられていた内容であり、少し検討項目が増えるということがあるにしても、大きな柱に位置づけということではないのではないか。住生活においても日常的な生活と直接には関係が無いので、そのような位置づけでよいと思う。

○ 住宅政策審議会でこれまで議論してきた内容は、非常時を除いた議論であったので、東日本大震災のような大きな災害を想定した項目があってもよいのではないか。これまでの議論では、高度防災都市づくりに向けた課題としての取組は挙げられているが、そのための具体的な対策として何を行うのかについては、いまだ議論が十分ではないため、今までの議論とは別枠に、もう一つ柱を立てる形の方がよいのではないか。

○ 「目指すべき住宅・住宅市街地に関する議論」は目標設定なので、この中に、「高度防災都市づくり」を明記することが一つの考え方であるが、そうすると、被災後の対応や復興の対応が抜けてしまうため、補足的に、柱を立てておいた方がよいのではないか。そう考えると、再掲も含めてまとめた形で、防災ないし震災に対する取組を入れる方が自然ではないか。

○ 「目指すべき住宅・住宅市街地に関する議論」として、環境負荷、震災、高齢者対応、子育て対応の4つを重視すべき視点とするという位置づけであれば、今までの議論を踏まえると納得できるのではないか。これらの視点を既存ストックを活用して進めるのか、住宅市場の中で達成するのか、さらに公共政策としての都営住宅をセーフティネットとして活用していくのかという方向性になっていくのではないか。

(既存ストックに関する議論)

○ 「既存ストックに関する議論」について、住宅市場はストックとフローで構成されていて、ストックは相当な規模で動くことが期待されており、また、セーフティネットも当然ストック活用が中心的な部分になっていて、新規供給によるセーフティネットの構築というよりは、既存ストックをどううまくマネジメントしていくかということだと考えると、柱の構成としては、「住宅市場に関する議論」、「住宅セーフティネットに関する議論」の2本でよいのではないか。今の時代、ストック活用を殊更強調する必要は無いのではないか。既存ストック流通への対応が、もはや住宅市場の中心的な部分を占めているとプレゼンテーションした方がよいのではないか。

○ 「既存ストックに関する議論」の中の「マンション管理の適正化」について、管理組合の主体性をどのように確立してもらうのかという表現があった方がよいのではないか。

○ 「管理会社の業務のチェック方法の検討」の趣旨としては、「管理事務の適正な運営の確保」を目的とすると考えられ、管理会社に委託されている業務に限らず、管理組合全体の業務が適正であるかの確認ということであり、それには監事の「管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査」する役割をどう担っていくかに行き着く。従って管理委託業務という限定的なものから、管理組合の主体性の確立を含めた管理組合運営全体の広範な問題の解決に向け、「管理組合業務の適正な監査方法の検討」とすることが望ましいのではないか。

○ 「マンションの管理の適正化」について、資料の記載項目をみると、分譲マンションを中心に考えられているが、既存ストックをどうしていくのかということを、東京の中で考えた場合、マンションで一番の課題は単身者向けや、コミュニティが少ない賃貸マンションではないかと考えられるので、賃貸マンションについての記載を充実させるべきではないか。

○ 「既存ストックに関する議論」の中の「都市づくりにあわせたマンション建替えの誘導」について、「マンションストックの再生・維持・更新」という項目が入っているとおり、建替えというのは再生の一つの手法であるので、「建替えの誘導」という表現より「再生の誘導」という語調にしたほうがよいのではないか。

(住宅市場に関する議論)

○ 「住宅市場に関する議論」の「消費者の保護・育成」の中で、契約前後の紛争の防止や解決の問題が挙げられているが、居住者同士のトラブルという問題もある。特に高齢者世帯が一つの施設に入ると起こりやすい問題であり、例えばルームシェアリングの時などにも、トラブルが発生する可能性がある。法律上では、クレーマーの方に有利であり、正常に営んでいる貸主に歩が悪いことが多い。賃貸住宅の管理において、居住者側だけのことが記載されているが、それが実態に合っているのかということも考えておく必要があるのではないか。

○ 「多様な主体との連携」について、具体的に何を行えばよいのかということが、 抽象的には思い浮かぶが、具体的に政策として何を行うのかのイメージが難しい。

○ 「多様な主体との連携」について、国でも公共の担い手に対する支援という枠組みをかなり重視しているので、それを参考にするとよいのではないか。

(住宅セーフティネットに関する議論)

○ 資料の内容を見るとかなりの高福祉政策が必要になってくると思われるが、民間にこの負担を求めることはなかなか困難なので、実際に施策として実施していけるかどうか疑問である。