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平成26年度 第2回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成26年9月5日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成26(2014)年10月15日

資料

主な意見の概要

【マンションの管理と行政・社会・市場との関わりについて】

○ 管理不全マンションも含め、過度の行政関与は、コスト面から対応が難しいのではないか。そういう意味では、市場を通じ管理の良し悪しが資産価値形成に影響することを、しっかり示していくことが必要である。

○ マンション管理は合意形成を通じて行うのが基本であり、豊島区の条例はこれを支援するものである。管理状況などの届け出の義務化によって、管理組合内の合意形成がしやすくなることを目的としている。

○ 基本的に市場は売買・貸借という場面で機能するものであり、マンション管理の大部分はそれとは別の話である。一番重要なのは、各区分所有者にマンション管理への関心を持たせることであり、それに向けて何が必要か検討すべきである。

○ 価格形成を市場に委ねる方法では、価格差が出るまでにはそれなりの時間がかかることや、その間に管理不全マンションが増えてしまう懸念がある。管理不全を防ぐという意味で、行政に期待されている役割、行政にしかできない役割があるのではないか。

○ 外部不経済の問題はあるが、マンションは基本的には私有財産であり、行政の関与は最小限にとどめるべきである。

○ マンション取得時に管理の重要性を認識してもらう契機として、市場での取引時点を積極的に捉えることは重要である。管理の重要目的のひとつは、資産価値の維持向上にあることから、売買時点での評価が適切に行われるべきである。

○ マンションにおける永住志向は高く、市場流動性は低いのではないか。実際、頻繁に売買が発生しているわけではなく、日常は極めて静かである。

○ マンションには私有財産と社会資本の両面がある。社会資本と考えた場合、地域の住環境への影響などの観点から、維持管理について管理組合がある程度責任を負う必要がある。

○ マンションを社会財と考えると、地域も含めたコミュニティ形成も重要である。

○ 管理不全マンションに対しても、マンション管理士が行政と連携しながら関与していくことが重要である。

【既存マンション取引における管理情報の提供等について】

○ 取引の際、仲介業者は売主に対し、適正な査定を行う上でも、管理情報の提供が重要であることを説明すると思うが、買主にとっても、選ぶ過程で管理情報は重要であるということを説明する必要がある。例えば、管理情報が整わなければ業務を受けない等の対応も考えられるのではないか。また、売主に言われるままではなく、積極的に現地調査等を行い、管理情報を確認する必要もあるのではないか。

○ 取引の際、仲介業者は、売主に管理情報の提供の重要性を説明し、「物件状況等報告書(告知書)」の記入を依頼する。しかし、不明との回答を受ければそれ以上は踏み込めず、それ自体が売買価格に影響する可能性がある旨の説明を行うに留まる。

○ 戸建住宅であれば雨漏り等の事実を知っていて敢えて買主に告げなかった場合には瑕疵担保責任が生じることなど説明もしやすいが、マンションの場合、共用部分で問題が発生した場合、その責任は管理組合が負うため、売主は責任を感じにくい状況にある。

○ 管理組合は不動産業者が管理情報の提供に関心が薄いと感じている一方で、不動産業者は管理情報に強い関心を持つものの、情報取得そのものが困難な状況にある。これは、不動産取引時の情報提供について、標準的な商習慣が存在していないことを示している。

○ 管理情報の提供義務者を明らかにした上で、これを標準化し定着させる事が最も重要である。その際、誰がどのような情報を提供可能なのか見極める必要がある。明文化されていない情報は管理組合のみが情報を持っており、その提供方法がルール化されなければ表面には現れない。

○ 現状において、管理情報の提供義務に係る管理組合・売主・仲介業者の役割は曖昧であり、査定価格への影響も不明瞭である。そこで、情報開示を一定期間ルール化し、資産価値への影響や商習慣として定着するか否かを、社会実験するのが良いのではないか。その後、強制力のある制度について検討を行ってはどうか。

○ 管理組合から不動産業者に管理情報を提供するのではなく、本来は、売主・貸主が管理組合に対して情報提供を求めるべきである。そうすれば、売主・貸主はマンション管理に関心を持たざるを得なくなり、マンション管理全体の水準の向上に繋がるのではないか。

○ 購入を決定する材料として、耐震診断・改修の有無、大規模修繕の有無、長期修繕計画の有無などの管理情報について、広告・チラシ・不動産サイトなどを通じ、物件を検索する段階で取得可能とすべきである。

○ 現地見学の段階では、消費者は既に当該物件の購入を検討している状況であることから、その場では、修繕履歴、総会議事録、修繕積立金の残高および滞納額の有無などのより詳細な情報を開示すべきである。

○ 標準管理規約では、元付業者(売主から売却を依頼されている業者)は利害関係人とされ、管理情報を得るための請求ができるが、客付業者(元付業者に買主を紹介する業者)は利害関係人ではないので、情報請求の根拠がない。客付業者は現地訪問による確認もできず、元付業者を通じて情報を取得するしかない。

○ 本来は、売主よりも購入予定者の方が利害関係は強いはずである。売主や元付業者だけでなく、購入予定者や客付業者も利害関係人であると明確にされない限り、円滑な情報収集は難しい。

○ 仲介業者による管理組合への情報請求が義務化されると、売主(区分所有者)は管理について無関心で構わないこととなる。売主に対し、日頃から管理への関心を持たせるためには、売主が管理組合に情報請求を行うことを基本とすべきであり、これがマンション管理の安定化に寄与するのではないか。

○ 標準管理規約には、売主の管理情報提供義務について記載がない。区分所有者は管理組合に対し情報請求の権利を有するが、そのこと自体が理解されておらず、管理組合内でもルールができていない。一方、買主側は早期の物件取得を望むことが多く、時間が限られている。売主側と買主側、双方の事情を並行して考えるべき。

○ 買主も売主も一般的な消費者である。マンション自体は非常に大きく複雑な構造体であるため、物件情報を的確に把握し説明することは、非常に難しい部分がある。情報のやり取りや説明方法について、行政の関与が必要ではないか。

○ 耐震診断の結果については、診断の有無だけでなくその内容についても情報提供が必要である。しかし、その専門性の高さから、構造の知識がある人でなければ解釈、説明は難しい。マンションは戸建住宅とは異なるという前提で情報を整理する必要がある。

○ マンションの耐震化の状況や、修繕計画の策定及び実行状況に対する消費者の関心は高い。これらに関しては情報開示がなされるべきであり、そのための行政関与は、ある程度必要である。

○ 不動産販売会社が協力し、管理組合のホームページを作成した事例がある。当該サイトにおいてはブログを用い、理事会における決定事項を公開しているとのことである。このようなケースは、情報開示の一つの形式となるのではないか。

【管理会社の変更に伴う書類等の引継ぎについて】

○ 管理会社の変更等により、設計図書の保管場所が把握されていないことがあるが、古いマンションだと、きちんと分譲業者から管理組合に引き渡されていないということがかなりあるのではないか。

○ 管理会社変更の際、管理会社間の引継ぎを円満に行うことは難しく、ほとんどなされていない。昨今、管理会社の変更が盛んな状況を鑑みれば、書類等の所在や過去の経緯に関するトラブルを回避すべく、分譲業者・管理会社間、また管理会社相互間で円滑に引継ぎを行う仕組みが必要である。

○ 円滑な引継ぎのためには、管理会社同士の成り行きに任せるのではなく、なんらかの制度が必要である。しかし、書類等は第一義的に管理組合のものであることから、一旦管理組合側に戻すのが正規の手続きと言える。その後、管理会社に書類を引き渡すこととなるが、引き渡しに関する事項をどこまで義務化していくか検討する必要がある。

○ 管理会社変更時は、前管理会社と管理組合の関係が悪化している場合が多い。しかし、書類等はまず前管理会社から管理組合役員に返却し、管理組合から新管理会社に引き渡すのが一般的な形態と言える。

○ 契約の主体である管理組合を飛ばして、管理会社同士でやり取りをするのは難しいのではないか。

○ 三者間(新・旧管理会社、管理組合)での引継ぎは検討できないか。管理組合は書類の返却を受けても、書類の内容について関心が薄い。三者間の引継ぎを円滑に行う仕組みがないと、書類の有無でトラブルになるのではないか。

○ マンション管理士の機能についてきちんと考えなければならない。管理会社変更による引継ぎの際に、第三者としてマンション管理士が関わることが重要である。

~マンション部会終了後に提出された意見~

【マンションの管理と行政・社会・市場との関わりについて】

○ マンションが単なる私有財産ではなく社会資産であり、しかも合意形成が難しく放置すれば周辺に悪影響を及ぼしかねないことを考えると、都で、区分所有者及び管理組合が最低限行わなければならない義務等について条例を制定すべきである。

○ 管理不全マンションをおおまかに三段階くらいに分類することには賛成である。その段階に応じた施策を考え、条例に反映させることを考えるべきである。

○ マンションは建物そのものに着目すると私有財産でしかなく、社会的な財産とはいえないが、マンションのコミュニティマネジメント・自治組織の管理運営の質に着目すれば、地域社会の一員として地域全体の社会的価値に正負両面の影響を与えうる存在であると考えられる。この観点から、特定個人の私有財産に公共が不必要に支援することは望ましくないが、地域の近隣自治組織の質に関わる点について、公共側が必要な支援を行うことは一定の妥当性があるのではないか。

○ 自ら情報発信できる管理組合はそれなりにコミュニケーションが形成され、良好な管理運営がなされているマンションである。他にも、ホームページを持つなどして活動している管理組合も少しずつ増えているが、これらを流通面で活用する仕組が考えられないか。マンションの売主は少しでも高い値段で売りたいはずであるから、売主又は仲介業者がこのようなプラスの情報を容易に取得し利用することができる方法を考えるべきである。すぐに価額に反映されないとしても、同じような物件であれば、このようなマンションが早く成約することになり、いずれ価額に反映されていく。もっとも、管理組合運営はその時の役員の資質にも大きく影響されるから、上記のような情報の継続性について把握する仕組みも考えなければならない。

○ 市場の仕組みを活用し、行政による(非効率な)コストをかけないようにすることが望ましいとの意見があるが、総体的な社会的コストを下げて、社会的便益を高めることが望ましいと考えられるので、必ずしも行政の役割を単純に縮小すべきかどうかは一概にはいえないのではないか。

○ 市場の中の様々な利害関係者に対し、どのようなインセンティブメカニズムが作用するかを検討し、適正なルール・土俵を設定する役割が行政に求められている。この観点から、情報開示のコストは区分所有者が最終的に負担し、また区分所有者・オーナーが管理の責任を有しており、より良好な管理状況を維持することへの意欲を高めるようなルール設定が、上述の観点から望ましいと考える。

【管理組合に対する支援について】

○ 第三者管理者方式については、仮にガイドラインを作成するにしても、特に管理会社が管理者になる場合について国の検討会とは別に、都として、利益相反の問題その他議論されている問題についてある程度の方向性を示しておくべきではないか。

○ 高齢者支援対策として民生委員等の活用は必要であるが、思うような効果は上っていないと聞いている。その理由は、高齢者の側にあるのか、民生委員の活用の仕方に工夫が必要なのかを検討する必要があるのではないか。

【管理会社の変更に伴う書類等の引継ぎについて】

○ マンション管理士については、その資格創設の趣旨に沿う活用を検討すべきであり、管理会社変更の際の引継ぎ等に立ち合せることは適当でない。

○ 担当物件の書類の引継ぎについては、管理会社にはできる限り日常的に管理組合の書類・備品などの整理をすることを勧めている。

○ 昨年度に発行された「フロント事務管理業務マニュアル」(改訂版)の中で、担当物件の引継ぎに関する項目を増補し、管理会社社内での引継ぎに加えて、社外への引継ぎにも使用できるような形でチェックリストが作成されている。