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平成26年度 第4回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成26年10月27日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成27(2015)年6月11日

資料

主な意見の概要

【適切なマンション再生手法の選択等のための支援について】

○ 再生策として改修・建替え・敷地売却の3つがあるが、まず改修、それがだめなら建替え、敷地売却へという順番付けをするのではなく、3つのメニューのどれを選んでもうまくいくような施策体系とするべきである。行政から見れば、いずれも不良ストックをなくすための方策の一つと言えるが、区分所有者から見れば、財産権の更新にあたるものであるため、その手法は自らの選択に委ねられるべきである。

○ 改修・建替え・敷地売却の3つの再生策について、いずれか一方に重心を置くべきではない。

○ 再生の方向を検討する段階からマンション内の高齢化の状況等を把握し、十分に配慮して進めていかないと現実的にはうまく進まないのではないか。

○ 改修・建替えのそれぞれの段階に応じて支援策を整理すると、管理組合に伝わりやすいのではないか。例えば、総会決議以前に行政が介入するとかえって軋轢を生む可能性があるので、その段階では普及啓発や、勉強会に応じられるような専門家の登録を行うといった支援が考えられるのではないか。

○ 東京都が建替えや敷地売却を主体にマンション再生を推し進めていくのではないかと管理組合側に受け取られないよう丁寧な施策の組立てが必要である。

○ 区分所有者は、ある程度の費用負担で済むのであれば、住戸の機能改善や耐震性の確保などについて抜本的に解決したいと思っている。費用対効果について議論し適切な再生手法を選択できるよう、建替えや改修などの一方だけに偏らない情報を提供することが重要である。

○ 適切に再生手法を選択してもらうためにも、マンション情報のデータベース化は大変重要である。データベース作成に当たり、高齢化や老朽化といった問題を背負っていくこととなる若い世代に関わってもらってもよいのではないか。

○ 建替えが可能となる客観的条件の一つは還元率が8割程度確保できるかどうかである。もう一つは、団地内・マンション内の組織体制が十分に確立されているかどうかである。長期的な計画を立てていく上で、自己のマンション・団地が、これらの建替えに必要な客観的条件を備えているかどうか認識することが重要である。その上で、マンション管理士等の問題意識を持った専門家が早い段階で管理組合に入り、問題や必要性を周知しながらそれぞれの状況に応じた再生を目指すことが必要である。

○ 還元率をある程度確保できるような条件に恵まれたマンションは限られており、そのほかのマンションについては、建替えは非常に困難な状況である。団地建替えなどについては、建替え派と改修派が共存できる方法を検討することも重要である。例えば、一括建替えではなく、一部を建替組合が所有し、抜本的に改修した後に戻るなどの手法もあるのではないか。集合住宅に長く安心して住むことができるよう様々な選択肢があることが重要である。

【修繕・改修等によるマンション再生について】

○ 建替えだけではなく改修によってもマンションを再生するという大きなビジョンが必要である。

○ 高経年化に伴う全体的な需要としては改修が主ではないか。老朽化即建替えというイメージは避けるべきである。

○ 還元率がある程度見込めるなど、建替えに必要な客観的条件が揃っている老朽マンションは少ない。抜本的な改修工事の手続きを踏んだ後に、人々の感覚は建替えの方向に向くと思われる。老朽マンションにとっては、建替えに進む前に、再生としての改良・改修工事が大きな役割を占めるのではないか。ローコストで暮らしの質を高めるようなマンション再生の技術や制度をさらに拡充していくべきである。

○ 高齢者の多い小規模のマンションの場合、仮に土地の買い手がついたとしても、現金が手に入るだけであり、結局はその後の住まい先を確保しなければならず、その困難さを憂慮し、結局そのまま住み続けるしか方法がないという場合もある。今後は改修工事に対する支援などを拡充していく必要がある。

○ 改修の場合は建替えと異なり民間資金が入りにくい。行政による財政的な支援がどこまでできるのかという課題がある。

○ 今の不動産市場では、たとえ良い改修をしても、市場価値に十分に反映されない。マンション再生は、財産権の更新という意味合いを持つ以上、資産価値を抜きに語ることはできないため、評価制度の確立が大変重要である。資産価値の向上に繋がらないのであれば、区分所有者は改修と建替えを同列の選択肢とすることができない。

【マンションの耐震化に向けた支援について】

○ 条件に恵まれ、建替えに進むマンションに対して行政が手助けする必要はないが、専門家が入っても耐震診断・改修が進まないマンションなどには積極的に支援をしていくべきである。

○ 大規模修繕工事に向けて資金計画を立て積立てをしているが、計画外の耐震改修のために工事費用が捻出できない場合、どちらを優先すべきか決断に困る場合もある。耐震改修工事と大規模修繕工事を同時に実施すれば、足場を共通して使うことで、費用の圧縮ができるが、補助を受ける前提として耐震改修工事に限るというような縛りがあると別々に工事することになり無駄が生じる。もう少し現場の実態に即した柔軟な対応が必要なのではないか。

○ 東日本大震災を契機として耐震改修の重要性は認識しているものの、費用面の問題で進まないという実態があり、財政支援は必須である。

○ 国による耐震性の判断基準は、Is値0.6以上と定められているが、その間の部分の改修についても都の独自のルールで対応できるとよい。財政的な制約はあると思うが、きめ細やかなメニューの提示ができればいいのではないか。

○ Is値を0.4や0.5に引き上げる耐震改修でも相当効果はあるので、Is値が0.6に満たない場合でも一部補助対象としてはどうか。Is値はあくまで建物の上部構造だけを評価しており、地盤や基礎は一切評価していない。地震で揺れる地盤、揺れない地盤があることを無視している。Is値0.6を絶対視して施策を組み立てない方がよいのではないか。

○ 耐震診断を実施しても、耐震改修でIs値0.6を確保するためには莫大な費用がかかるため、その先に進めないマンションがある。建物の倒壊を防ぐという目的であれば、例えばピロティ部分の耐震改修工事であっても補助対象に加えてよいのではないか。

○ 耐震改修に対する各区市町村の補助内容には相当のばらつきがある。耐震改修といっても、Is値0.5から0.6を目指す場合と、0.3を下回るものから0.6を目指す場合とでは費用や工事規模が大きく異なる。

○ 実際にIs値0.3あるいは0.2のものを0.4まで引き上げる工事を実現し、区が補助を行っているケースがある。大破と中破の中間あたりを第一段階で目標とする耐震改修は非常に有意義である。補助要件として住民票を確認し、その上で、高さ制限や用途変更があったとしても、現状の規模を大きく超えない範囲であれば一回限りの建替えを認めている区もある。こうした区の取り組みも、今後の施策の参考となるのではないか。

○ 重要事項説明を行う宅建業者にとって、耐震診断結果のIs値0.5と0.6の違いなど、よく理解できない部分がある。Is値0.4が0.5となってもそれがどのように良いのか専門家でないと説明は困難である。市場に出る際には耐震性のレベルについてわかりやすく表記する必要があるのではないか。

○ 旧々耐震基準に該当するが耐震診断を受けていないマンションについては、はっきりとマイナスの評価をつけるべきではないか。

○ 旧公団の分譲マンションなどは壁式構造が多く、比較的耐震性が高いと言われている。建築年だけで耐震性を一律に捉えるのではなく、この部分についてもう少し触れてもよいのではないか。

○ 同じ団地の中でも壁式構造とラーメン構造が混在している場合もある。壁式構造であれば診断方法も変わり、精密診断不要のものもある。専門家が現地に赴いて、現場・図面・構造計算書を確認する必要がある。

【マンションの建替えに向けた支援について】

○ 建替えにあたり、特に高齢者から、建替え後の居住期間を考慮するとメリットを感じないといった反対の声が多いと聞いている。住民の高齢化問題も視野に入れて、きちんと手だてしないと、例え建替えたとしても、建物が更新されるだけで高齢化の状況は解決しない。

○ 建替えにあたって、高齢者は経済的な問題や仮住まい中の住環境の変化などに不安を感じている。建替えが実現したところは、そういった問題を正面から捉えて、高齢者が参加しやすいよう、戻った後も終の棲家として住み続けられるような事業内容としている。合意までには反対も多いが、管理組合内で互いに支え合いながら進めることで成功している。

○ 建替えにあたっては、事業計画作成前から問題意識を持った専門家が管理組合に入ることが重要であるが、全体で意思決定がなされていない段階で、推進派もしくは反対派のどちらか一方を支援していると受け取られないよう、第三者の立場として適切に関与することが求められる。

○ 建替えにあたり容積率などの一定の緩和策は必要であるが、その際、対象マンションの定義を明らかにした方がよい。都心部の老朽マンションの実態を見ると事務所化しているものも多く、一般のオフィスの建替えと比べて優遇する理由が求められる。緩和措置を取るにあたって、居住の実態等を基準の一つとしてはどうか。

~マンション部会終了後に提出された意見~

【マンションの耐震化に向けた支援について】

○ 「Is0.6未満」のマンションに対して、都が独自に補助することは避けるべきと考える。「Is0.6以上」という数値は、国が地震に対する安全性として「危険性が低い」として定めているものであり、基準として通用しているものである。「危険性がある」さらに「危険性が高い」とされている「Is0.6未満」のマンションに対して独自の補助を実施するとすると、一体何を目指して支援しているのか説明がつかない。また、改正円滑化法において新設された敷地売却制度における「要除却」の認定基準にも「Is0.6未満」という数値が用いられることを考慮すると、不良ストックの解消手法としての改修と除却とでの整合性を欠くことにもなる。