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平成26年度 第6回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成26年12月18日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成27(2015)年6月11日

資料

主な意見の概要

【適切なマンション再生手法の選択等のための支援について】
【マンション再生に向けた普及啓発等について】

○ 普及啓発等の施策については、対象となるマンションをある程度絞り込むべきである。きちんと管理して再生していくという意思が見られないマンションに公的支援は控えるべきである。

○ 対象としているマンションのイメージを整理したほうがよい。これまでの議論では、どちらかというとファミリー向けマンションを対象としていたが、管理不全マンションへの支援については、投資型のワンルームマンションも含まれるのではないか。対象がある程度整理されていると議論が確立しやすくなる。

○ 行政からの支援は、管理組合内で合意を得た上で申請しないと実現しないため、支援を受けられるマンションは相当レベルの高いものに限られる。

○ 合意形成後に支援に関する補助申請をするということで、支援の対象とするマンションは一定程度絞り込まれていると言える。一方、管理情報の提供がないようなマンションについては、市場からの退出を促すなど、市場の機能と合わせて支援対象を絞り込んでいく必要があるのではないか。

○ 万一マンションが管理不全に陥った場合、周辺に与える影響が高いため、対象そのものは幅広く取っておいて様々な支援メニューを用意しておく必要がある。管理不全を防ぐためには、再生に向けた普及啓発だけではなく、条例等で自治体への情報提供や計画修繕の実施などを義務付けし、管理組合の意識を高めるといった方法もあるのではないか。

○ 施策を展開するに当たり、スラム化を回避するという意思をより明確にするためにも、条例等に基づく一定の義務付けが必要ではないか。

○ 長期的な使用に耐えうるマンションが出てきている中で、分譲時などの早い段階から一律に将来の建替えや解散について意識を持たせるのはどうか。再生が必要なマンションに意識を持ってもらうことでよいのではないか。

○ 新築マンションの分譲時に修繕積立金の裏付けとして長期修繕計画が作成されるが、これはあくまでも目安であり、数年ごとに見直すものだということが注記されている。こういった注記を工夫するだけでも、将来の再生について意識の持ち方が変わるのではないか。

○ ガイドブックやDVD、各種イベントの実施などは、既に基礎知識がある方に有効なツールである。維持管理に関心がないマンションをターゲットとして、築年に対応した修繕計画の重要性、それに伴う資金調達、将来の再生手法など、ごく初歩的な基礎知識をどう届けるか検討する必要がある。例えばこれらを一冊にまとめ、築年数等で対象を限定してポスティングしてはどうか。

○ 管理組合がある程度活動できるような状況にないと施策を用意しても生きてこない。管理組合の取組を促すためには、一般的な普及啓発のほか、関心のないマンションを対象とした初歩的なレベルの情報提供も重要である。

○ 管理組合という組織の特性を理解した上で支援に当たることが求められる。支援を求めている管理組合がどういう運営状況にあるのかきちんと把握する必要がある。

○ 例えば管理情報をしっかり公開するなど、一定の努力をしているマンションには、耐震化やそれ以外の取組についても積極的に支援するというような仕組みを併せ持ったほうがより効果的ではないか。

【マンションの再生に向けた支援について】

○ 大規模な団地では、再生手法を選択するだけでも合意形成が非常に困難である。長期的な計画の下で再生を目指していくことが望ましく、行政はその計画づくりを誘導していく必要がある。長期再生計画に基づいて、改修を段階的に行う、改修と建替えを行う、建替えを段階的に行う、など現行の法制度では困難な、多様な団地再生が可能になるとよい。時間をかけて検討していく中で、再生方針に違和感のある区分所有者は転出し、また賛成者が転入することで合意形成の密度は高まっていく。

○ 団地の再生は区分所有者の高齢化と合わせて検討していかなければならない。長期的な計画を示し、計画に従ってそれぞれの生活設計に合った選択が可能となるような配慮をしなければ、建替えか改修かという二項対立で進んでしまう。長期的な計画を示して、建替えと改修の両方がうまく併存可能となるような、もしくは時間をかけて合意形成を誘導できるような支援があるとよいのではないか。

○ マンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下「マンション建替法」という。)に基づく認可権限が区市に移譲されたが、多くは地元からの要望対応等に追われてしまい、長期的な視点でマンション再生を捉えられていない。区市への支援や意識づけが不可欠であり、場合によっては条例などである程度フレームを決めて誘導するなど、行政間の連携を担保しないと施策が有効に機能しないのではないか。

○ マンション建替法に基づく容積率の緩和特例制度については、住民の期待も大きいことから、速やかに対応できるよう準備を進めていただきたい。

○ まちづくりと一体となってマンションの再生を推進する新たな制度(以下「新制度」という。)については、老朽マンションの再生を発端とするのではなく、むしろ都全体の都市のあり方を踏まえて重要なエリアを指定し、そこに手厚い支援をしていくという考え方で進めるべきである。その際には、支援だけでなく何らかの義務も必要ではないか。

○ 新制度により容積率緩和等の支援を行う際には、老朽マンションのみを対象とするのではなく、地域全体を面で捉えて再生を進めていくべきである。

○ 新制度を活用することで、まちづくりに対する行政の考え方を示すことができる。また、この地区のマンションはこれを契機として合意形成を進めやすくなるのではないか。

○ 新制度では、区市側にはマンション再生を含めたまちづくりの着実な遂行という責任が発生する。このため、ある程度の見込みがなければ計画的に進めていくことは厳しいと思われる。区市が新制度を積極的に活用して、マンション単体だけではなく面的な再生を促していきたいと思える部分をもっと示していく必要がある。

○ 自治体内に複数の団地がある場合、行政は全体のバランスを勘案して特定の場所への補助を敬遠することがある。こうした場合に新制度をうまく活用して、再生の集中と選択を誘導していくことができるのではないか。

○ マンション建替法の改正で容積率緩和が決まったが、現実的には日影規制等の様々な制限があるため、それらと合わせて緩和していかなければ進まない。一定の地域全体を緩和した上で、マンションに対する容積率緩和を実現していくことは非常に良い手法であると思われるので推進していくべきである。

○ 地域単位で容積緩和をしたとしても、需要が伸びない状況の中、どれだけのインセンティブになるかという問題もある。また、容積緩和のインセンティブを与える際には一律に考えるのではなく個別に判断する視点が重要である。

○ 新制度では、建替えだけでなく改修による再生も含まれるべきである。耐震化に対する意識はやや風化し、むしろ団地ではエレベーター設置や外断熱改修等の日常的な部分を優先してほしいという意見もある。耐震はもちろんだが、それよりも先に改修による再生のイメージを強く出していく必要がある。

○ 新制度については、地元からの自発的な動きが発端となる場合もあるし、行政側からの働きかけによるものもあると思われるが、いずれにしてもスピード感が大事である。

【改修によるマンション再生に対する支援について】

○ 管理組合側からすると、支援制度が設けられて初めて意識が高まるということもある。改修工事の際に仮住居が確保できるかどうかは工事実施を決める大きな要素であり、きめ細かい支援が必要である。

○ マンション改良工事助成制度の助成期間については、現行の7年間でも十分だと実感している。耐震マークの交付申請手続きも非常にスムーズで負担感はない。

【マンションの耐震化に向けた支援について】

○ 長期修繕計画には大規模修繕工事は含まれるが、耐震改修は含まれていないものがほとんどであり、耐震改修工事の実施について合意を得るのは大変困難である。工事費用も多額となるため、資金の確保が難しく断念するケースが多い。

○ 段階的な耐震改修に支援をする場合は、最終的にIs値0.6以上とする意思をどのように確認すべきか。何らかの制度的な担保が必要である。現状よりも少しでも良くなれば公的支援をするということが本当に効率的といえるのかどうか。

○ Is値0.6に届かない耐震改修については、例えば補助率を下げるという方法もあるのではないか。段階的な耐震改修は長期的な計画となることから、計画全体について管理組合内での合意を得るのは非常に難しい。現実的に需要は少ないのではないか。

○ Is値0.3を下回るような分譲マンションが多く実在している。実施設計後に見積書を取ったものの、戸当たり負担額が高額なために耐震化を見送るマンションもある。そういったところを救うためには、段階的な耐震改修への補助や、耐震性能の程度によって補助内容に差をつけるなどの施策が有効である。

○ 段階的な耐震改修に支援するにしても、全体の計画内容について合意を取るのは困難であり、事実上使われない可能性が高いのではないか。事業中止となれば補助金の返還請求を受けることにもなる。例えば第1段階で一定程度の耐震性を確保すれば、その後は実施義務ではなく努力義務とすることも検討する必要があるのではないか。

○ 補助金の返還請求権は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(適化法)」に基づき生じるものである。サービス付き高齢者向け住宅では、補助金の交付時から10 年間はその登録要件を満たす必要があるが、これに反したものに対して補助金の返還が求められる事態となっているものもある。長期計画となる段階的な耐震改修に対する支援制度についても、状況によっては補助金返還等の法的措置が生じる場合がある。

○ 管理組合に補助金の返還請求がなされた時に、管理組合が団体として返還請求に応じられない場合は、各区分所有者及び特定承継人に対し、その共有持分に応じて返還請求がなされる。段階的な耐震改修への支援制度があったとして、その補助を受ける際には、管理組合にこの点も認識してもらう必要がある。

○ 段階的な耐震改修を進めるにあたり、法律的な観点も含めて、必ず実施するという担保をどう取っていくか、また実際に使われるためには何が必要かということについて検討する必要がある。