平成22年度 第4回 東京都住宅政策審議会企画部会(平成22年12月24日)における資料
資料
- 次第([PDF]103KB)
- 資料-1 検討課題例と今後の取組の方向イメージ(案)について
【都民の居住の安定確保】【住宅政策の3つの基本的方向の横断的なテーマ】([PDF]622KB) - 資料-2 園田委員提出資料([PDF]2.1MB)
- 資料-3 竹井専門委員提出資料([PDF]2.8MB)
- 資料-4 海老塚氏(法政大学現代福祉学部非常勤講師)提出資料 ([PDF]1.0MB)
- 資料-5 審議スケジュール(案) ([PDF]112KB)
主な意見の概要
(高齢者向け住宅)
- 高齢者向けの住宅については、民間事業者が高齢者専用賃貸住宅の供給などにおいて活発に事業展開を始めているが、全てを自らの住宅の中で解決しようとすると、まず見守りが必要であり、24時間365日見守りを行う人員を手当するためには、膨大なコストが掛かってしまう。
このコストは、入居する高齢者世帯の費用負担となり、近傍の同じ面積の通常の賃貸住宅に比べ、家賃が上乗せされるが、この一世帯当たりの負担を3万円程度に抑えるためには、50戸くらい集めなければ難しい。
ところが、50戸を造るとなると、建物だけで5億円くらいの資本投下が必要で、それが可能なのは、介護保険や医療保険での収入が期待できる社会福祉法人や医療法人に偏ってしまう。
一方、ペンション型というのは、各人が数百万円ずつ出し合えば、1億円強くらいで実現可能であり、地域密着型である。 - 例えば空き家のある賃貸住宅で、必ずしも1棟全てでなくても、近隣にある、こちらのマンションから5世帯、あちらのアパートから3世帯といったものを組み合わせて、グループホームのような形態で運営することは可能と考えられる。
そのためには、地域である程度面的にきちんとバックアップできる組織と連携していることが必要である。
建物という閉じた中ではなく、中学校圏や徒歩圏といった、面的に様々な支援やサポート、福祉事業などを行っている組織とネットワークが組めれば、十分に可能である。 - 高齢者向けの住宅として高水準なものを造ろうとすると、しっかりした社会福祉法人等でなければできないが、そこまで本格的でなくても、もう少し小規模な10人か20人くらいの規模の高齢者向け住宅で、地域の高齢者問題に関心を持っている市民が集まってつくるようなものの数を増やしていくことが必要ではないか。
そうでなければ、膨大な高齢者人口増加の問題に対応できないという認識の下に、高齢者の住宅の問題に関心を持っている市民が地域に数多くの高齢者住宅を供給していけるように支援していくことが必要ではないか。 - 高齢者向けの住宅の事業主体として、個々のNPOでは、1億数千万円の資本投下は荷が重いため、例えば生活協同組合などある程度地域に基盤がある団体が母体となって、小規模に展開していくとリーズナブルではないか。
- 高齢者向けの住宅について、今の日本のNPOでは、新築を行おうとすると資金的にかなり難しいが、既存の建物の改修で事業が可能であれば、今でも実践されており、この部分は住宅政策として新たに展開していく可能性があると思われるので、政策的にもバックアップする必要があるのではないか。
(多様な主体による住宅事業)
- 今回、民主党が税制改革の中で、NPOなどに寄付をすると、寄付をした金額の半分を税額から控除できるという非常にドラスチックなことを始めたので、アメリカでのロー・インカム・ハウジングタックス・クレジット(低所得者向け住宅税控除)の仕組みにかなり近づく。
インターミディアリー(中間支援組織)は、NPOなどの地域の小さな事業体に対して、出資金をある程度束ねて金融を行ったり、事業的に行き詰った場合に、立ち直るまでの下支えをするというのが、実は本当の機能である。
東京都くらいの規模でそういうことを行うのが一番適当であると思われるので、慎重に、どういう機能が必要で、誰がどのように行うべきかということを論理的に考えていく必要がある。
(インスペクション(住宅検査))
- アメリカやイギリスでは買い手がインスペクションを行っているが、日本では、現在の取引制度から考えると売り手側から情報提供してもよいのではないかとも思われる。
- 日本では、インスペクションは、売主側は欠点を指摘されるのは嫌だという感覚が強いため積極的でなく、買主側も取引に時間が掛かってしまうことからあまり行われない。
アメリカでは、基本的にインスペクションを行うことが商慣習として当たり前になっているが、日本の場合は早い者勝ちなので、インスペクションは不要だから早く購入したいとなると、そこで終わってしまう。
流通業者としては、売主、買主の双方にとっての安心な取引という観点から、なるべくインスペクションが商慣習になっていくよう努力する必要があると考えている。 - 日本では、インスペクションを行う場合、かなりの割合で流通業者が費用負担している。
日本ではまだインスペクションが定着していないので、流通業者が先導してコスト負担しながら行っていく中で、時間が掛かっても徐々に定着していけばいいのではと考えている。 - 不動産流通経営協会では、「FRKバリューアップモデル」というインスペクションのシステムを用意しており、この中に補償の仕組みがある。
このシステムでは、インスペクションを実施した建物については、当初6カ月は売主の責任であるが、その後の6カ月については、保険が掛かるようになっており、保険から修理費が出る形になっている。
このモデルはまだ始めたばかりで、実際に保険対象になった事例はない。 - インスペクションの質を確保するために、住宅の診断士の登録制度や一定の試験を行うことが必要である。
現状では、流通事業者から住宅の診断士を紹介している状況である。 - 健康面でみると、断熱性などの評価が重要である。
- 建物の断熱性や設備による環境コントロール性能などの評価については、海外においては、現在日本で行われているホームインスペクションに比べかなり綿密に行われており、例えば断熱についても実際に屋根裏に上がったり、主要な壁は中についても見たりしている。
FRKで、インスペクションのシステムを始めた理由は、基本的なところをまず根付かせたいという観点であり、売主が負う瑕疵担保責任に着目し、専門的な検査を行うというところでまずはスタートした。
行く行くは、設備の評価まで進める必要があると考えている。
(住宅困窮者への支援)
- 日本には家賃補助がないという話があるが、事実上、生活保護の中に住宅扶助費があり、実質的に家賃補助になっている。
それを活用して低所得者向けの住宅ケアをする団体が増えているので、そうしたことを公営住宅と同様に政策上位置付けていく必要があるのではないか。
公営住宅は増やさず、数を維持ないしは減らす一方で、住宅に困窮する人も多いので、非営利組織や企業が住宅に困窮する者に提供する住宅を拡大していくという方針を立てることが必要ではないか。 - 区や市の単位で100億円くらいのお金が生活保護の住宅扶助として民間賃貸住宅のマーケットに流れており、それがある意味で民間の住宅マーケットを動かしている面もある。困窮者に対する住宅政策を議論するのであれば、公営住宅だけでなく、民間組織による住宅供給を含めなければ、今日の社会状況から考えて意味がないと思われる。
- 家賃補助を本格的に行うとすると、国政レベルで、ナショナルミニマムとして実施しないと限界があると思う。
高優賃や特優賃で家賃補助が始まっているが、自治体が2分の1を負担しなければいけないためなかなか進まない。
地方公共団体単独で家賃補助を行うには限界があると思うので、国政レベルでの家賃補助を考えていかなければいけないと思う。
将来的には家賃補助を本格的に実施することが望ましいが、段階的には、プロジェクトベースの家賃補助が必要ではないか。
例えば、設備共用の木賃アパートで住宅事業をやっているところに家賃補助するような方法を取れば、国政レベルでの家賃補助ではなく、地方公共団体単独での家賃補助もあり得ると思う。
政策的にある程度好ましく、誘導するようなところで家賃補助と抱き合わせで進めていけば、民間非営利組織など多様な主体による住宅事業が拡大するのではないか。 - 20世紀的な、ヨーロッパで実施されていたような、社会民主的な家賃補助政策は、今更、全く有効ではない。多額の資金をつぎ込みながら、低ベネフィットな居住環境しか確保できない現状を打破し、場合によっては、住宅に流れる資金を縮減しつつ、かつより高い効果を引き出すような政策の検討こそ必要ではないか。
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