投資用不動産を買う前に


投資用不動産を購入し、しっかり利益を出している方もいれば、赤字になってしまっている方もいます。
投資用不動産を買うということは、賃貸経営を行うということです。経営である以上、リスクもあります。
まずは、この点をしっかりと自覚しましょう。     

投資用不動産を購入する前に、このページをしっかりとお読みいただき、賃貸経営を始める準備を十分に行った上で、投資用不動産の売買契約を締結するようにしましょう。     


◆収支見通しをしっかり立てる  

・賃料はいくらくらいが妥当なのか、近隣の同程度の複数の物件の賃料について、ネット広告などで確認し、比較検討して決めましょう。他方で、賃貸経営を行う上で、一定の費用負担は必要となります。

・ローンを組んで購入した場合は、その借入金の返済があります。
 金利変動のリスクもあるので、余裕をもった返済計画を立てる必要があります。 

・物件を所有することで、固定資産税・都市計画税などの税金の支払いもあります。 
→ 固定資産税・都市計画税については、都税事務所(23区内の場合)、市役所・町村役場にお問い合わせください。 
 ☞固定資産税・都市計画税(土地・家屋)┃不動産と税金┃東京都主税局
→ 不動産取得税については、都税事務所にお問い合わせください。
 ☞不動産取得税┃不動産と税金┃東京都主税局

・万一の災害に備えて、火災保険・地震保険への加入なども必要で、保険料も計算に入れることが必要です。
 なお、入居者さんの火災保険加入を賃貸条件(契約上の借主の義務)にしておくことも重要です。
 そもそも、物件を購入するに当たり、地震に強い物件を選ぶことも重要です。
 (例)新耐震基準(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したもの)の物件を選ぶ  
    耐震診断を受けていて、耐震等級3の物件を選ぶ 

・区分所有マンションであれば、管理組合への管理費・修繕積立金の支払いがあります。
 万一、売主にこれらの滞納があれば、その支払い義務を承継することもあります。
 → 重要事項説明書を売買契約の締結予定日よりも早めに入手していただき、そこに書いてある内容につき、ご自身でも、マンション管理会社(自主管理のマンションであれば管理組合)に確認しましょう。

・物件に故障や不具合があり、借主さんから修繕を要求される場合があるので、その費用も想定が必要です。
 →突然的に修繕が必要となる場合に備え、日ごろから、収入の一定割合を積み立てておくことも有益です。

・家賃を滞納される可能性もあります。
→最近は、個人の連帯保証人ではなく、滞納家賃を確実に回収するため家賃保証会社を付けることも増えています。入居者さんに対して、家賃保証会社を使う(保証委託契約を締結する)を賃貸条件(契約上の借主の義務)にしておくことも重要です。
→入居者さんと直接賃貸借契約を締結するのではなく、不動産業者(サブリース業者)に借り上げてもらい(マスターリース契約)、その業者が入居者に転貸する(サブリース契約)方式もあります。その中には、入居者の家賃滞納があっても、一定額までは、不動産業者(サブリース業者)がオーナー様への家賃を 払ってくれる方式(空室保証型・家賃保証型)もあります。  
  サブリース方式については、後で詳述しますが、メリットだけでなくデメリットもありますので、内容をよく理解して契約する必要があります。 

・十分な収益が見込まれない場合には、物件を売却処分することも検討しないといけません。
 そのときに、安価でしか売れない、あるいは、そもそも買い手がつかない、ということがないよう、物件を購入する時点で、十分に調べましょう。 
 (例)新耐震基準(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したもの)の物件を選ぶ  
    耐震診断を受けていて、耐震等級3の物件を選ぶ  
    周辺環境をよく調べ、騒音・振動・迷惑施設等がある物件は避ける 
    事故物件は避ける 
    都市計画道路についてよく調べる(区市や都のホームページで、計画の時期、道路位置等を確認) 
    →近隣に幹線道路ができることで、交通の利便性が向上し、資産価値が向上する可能性がある反面、騒音・振動の影響で資産価値が下落する可能性もあります。 
    →将来的に道路用地として収用されてしまう物件を買うことがないよう、十分に注意しましょう。

・なんとなくのどんぶり勘定ではなく、表計算ソフトなどを用いて、金額を集計し、収支を「見える化」して十分に把握しておくことが重要です。


◆稼働率を上げる(空室率を下げる) 

・なかなか借り手がつかず、いつまでも空き家のままでは、見込んでいた収益が得られません。

・まず、物件を購入するに当たり、立地のよい物件(人気の街、駅から近い等)選ぶことも重要です。

・物件の立地、間取りなどから、想定される借主さん、入居者さんの属性を考えて、ニーズをくみ取り、物件のセールスポイントを見つけましょう。 
 (例)女性限定マンション ペット可の物件 逆に、ペット不可の物件 など 

・アパート1棟を購入して賃貸する場合は、設備を最新のものにするとか、充実させることも有益です。
 (例)集合郵便受けの下に、宅配ボックスを設置する 
    エントランスの扉をオートロックにする 各部屋を二重鍵にして防犯に強いマンションにする 等 

・防災対策を充実させることも、賃貸物件の利点となり得ます。
 (例)防災グッズを常備する 食料備蓄する オール電化なので ガスコンロを常備する 
     簡易トイレを準備する 

・やりすぎは禁物です。費用対効果のバランスに留意しましょう。 
(例)1部屋のみ賃貸に出さず、筋トレマシーンを設置して、入居者用のトレーニング室にする  
(例)1部屋のみ賃貸に出さず、カラオケセット等を設置して、入居者用のパーティールームにする

・入居者さんと直接賃貸借契約を締結する方式ではなく、不動産業者(サブリース業者)に借り上げてもらい(マスターリース契約)、その業者が入居者に転貸する(サブリース契約)方式もあります。その中には、入居者が決まらず空室のままでも、一定期間内であれば、不動産業者(サブリース業者)がオーナー様への家賃を払ってくれる方式(空室保証型・家賃保証型)もあります。  
 サブリース方式については、後で詳述しますが、メリットだけでなくデメリットもありますので、内容をよく理解して契約する必要があります。 

・区分所有マンションの1室を購入して賃貸する場合は、1区分所有者の判断で共用部分の設備を自由に変更・設置することはできません。その場合、専有部分についてのみ、管理規約に反しない範囲で、対応することになります。  
(例)・ワンルームマンションで、学生さんなど、身一つで入居する人をターゲットにする場合 
    ⇒ エアコン、照明器具、ベッドや収納家具、勉強机など、部屋に備えておく 等   

◆不動産の賃貸借契約(法的な権利・義務)について知る 

・不動産の貸主は、賃料債権など法的権利がある反面、貸す義務、つまり、修繕義務などの法的義務も負担することになります。 

・賃貸借契約は、貸主と借主との間で締結するので、貸主さんが、お金(管理業務委託料)を払い、不動産業者に賃貸管理業務を委託していたとしても、この法的義務から逃れることはできません。

・物件や設備に故障・不具合があったときに、修繕義務を履行しないと、借主さんから訴訟を起こされる可能性があります。
 
・退去時の原状回復・敷金精算に関しても、貸主さんと借主さんとトラブルになり、借主さんから訴訟を起こされる可能性があります。
 例えば、賃貸借契約が終了し、借主さんが退去した後で、物件を確認したところ、破損や汚損が見つかったというような場合に、その原因が、借主さんの使い方の問題なのか、それとも、経年劣化や自然損耗によるものなのかで、争いになるようなこともあります。

・入居中の修繕、退去時の原状回復・敷金精算の基本的考え方につき、法律上の原則や判例等をもとに、現時点において妥当と考えられる一般的な基準について、東京都では、「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を策定し、情報発信しています。 
賃貸経営を始める前に、よくお読みいだだき、これらのルールをしっかりと把握しておく必要があります。

賃貸住宅トラブル防止ガイドライン~概要~|賃貸住宅の紛争防止|東京都住宅政策本部


 

・投資用不動産については、未入居の新築物件や空室となっている中古物件の場合もあれば、賃貸借契約が継続中で入居者がいる物件を購入することもあります。この場合は、貸主の地位が売主から買主に引き継がれるので、「オーナーチェンジ」という言い方もします。

・オーナーチェンジを行うために、借主の承諾を得る必要はないですが、投資用不動産の売買により、所有権が売主から買主に移転することに伴い、賃貸借契約の貸主の地位・権利義務関係もそのまま承継されます。

・よって、オーナーチェンジに伴って、正当の事由もないのに、貸主さんから賃貸借契約を解除して借主さんの退去を要求したり、一方的に賃料の値上げを要求したり、定期借家契約の変更を要求したりすることはできません。 

◆サブリース方式のメリット・デメリット 

・サブリース方式の場合は、通常の賃貸借契約とは、契約当事者が異なります。

・投資用不動産を購入したオーナーさんは、サブリース業者とマスターリース契約を締結し、
サブリース業者が入居者とサブリース契約(転貸借)を締結することになります。
つまり、オーナーさんの契約の相手方はあくまでもサブリース業者であり、入居者さんとの間に契約関係はありません。

・そのため、オーナーさんとしては、入居者さんに対して、直接、契約上の権利を主張することはできない反面、入居者さんから契約上の義務の履行を求められることもありません。 

・投資用不動産の中には、すでにマスターリース契約が締結されている物件を購入する場合や、不動産の売買契約と同時にマスターリース契約を締結することとなる場合もあります。

・サブリース方式については、通常の賃貸借契約とは異なる、メリットやデメリットがありますので、その点をよく理解して納得した上で、契約を締結するようにしましょう。 

➣メリット  
・入居者と直接の契約関係がなく、入居者から直接訴えられることがない 
 (例)修繕要求・修繕義務不履行による損害賠償請求・退去時の敷金返還請求など  
・家賃保証型であれば、空室期間中も賃料が得られる  

➣デメリット   
・サブリース業者からもらえる賃料が、入居者からサブリース業者がもらう賃料より安くなる 
・サブリース業者は借地借家法で保護されるため、入居者との直接契約に切り替えたくても、
正当の事由がない限り、マスターリース契約を解除してサブリース業者を排除することができない
・家賃保証型といっても無制限ではない場合もある  
(例)家賃保証は、空室期間が1年以内の場合に限られる 等 ☜契約書をよく確認することが重要です。  
・マスターリース契約の賃料を減額される可能性がある 

➣関連リンク 
東京都の相談窓口と相談事例(リーフレット)|不動産取引|東京都住宅政策本部
「不動産投資」「相続税対策」などをお考えのみなさまへ ~サブリース契約を締結する前に~|不動産取引|東京都住宅政策本部

◆投資用不動産の下調べをする 

・物件を購入する前に、宅建業者から、重要事項説明書を交付され、宅建士の説明を受けることになります。
 これは本来、その物件を購入するか否か決めるための判断材料の提供を受ける趣旨なのですが、実際には、売買契約の締結日において、その直前になされることが常態化しています。これでは、説明内容を吟味し、慎重に検討して契約を締結することができません。 
→そこで、宅建業者にあらかじめ連絡した上で、重要事項説明書のドラフト(下書き)について、売買契約締結予定日より数日前に入手するようにしましょう。 
 →もちろん、契約締結の当日には、重要事項説明書の原本と、あらかじめ受領したドラフト(下書き)とをよく見比べていただき、記述が変わっている点がないかどうか、多少時間をかけても構いませんので、十分に確認してから、契約を締結しましょう。 

・重要事項説明書に書かれている内容について、契約締結日までに、ご自身でも確認するようにしましょう。  

・現地確認は必要です。次のような点を購入前に確認しておくことが重要です。  
→居住者がルールを守っているか 
 (例) ・ペット不可物件にもかかわらず、一部居住者がペットを飼っていないかどうか
・女性限定マンションにもかかわらず、入居者らしき男性が出入りしていないかどうか 
→管理が行き届いているか 
(例) ・ごみ置き場が汚れていないか ・電灯が切れたままになっていないか  
・エントランスや廊下など共用部分に汚損・破損がないかどうか  
 →周辺環境 
(例) ・騒音や振動を発生させる施設が近隣にある  ・墓地の目の前 等々    

・投資用不動産の購入に当たり、気になる点・疑問点は、遠慮なく、不動産会社の従業員に質問しましょう。 

・従業員から口頭で回答されたときに、それがご自身にとって妥協できない重要な事項であれば、単に口頭回答だけでなく、重要事項説明書に追記してもらい、担当者ではなく業者の印鑑を訂正印として押してもらうようにしましょう。
 →口約束では、反故にされても証拠が残りません。  

➣関連リンク 
不動産取引の手引き|不動産取引|東京都住宅政策本部
☜こちらのページに、不動産を購入するときに注意するべきポイントをまとめていますので、ご参照ください。   

◆投資用マンション販売等の執拗な勧誘行為について

・投資用マンション販売や買取りなどの不動産取引に関して、宅建業者から執拗な電話勧誘を受けたなどの 苦情・相談も寄せられています。 
・しつこい勧誘は、宅建業法違反です。東京都知事免許の宅建業者からの執拗な勧誘行為が続いていて、断り切れず、売買契約を締結してしまうことがないように、すぐに、都庁不動産業課に相談しましょう。 

➣電話 
・民間住宅部 不動産業課 指導相談担当 (直通)03-5320-5071  

➣関連リンク 
投資用マンション等についての悪質な勧誘電話等にご注意ください!|不動産取引|東京都住宅政策本部
緊急告知 ~悪質な不動産取引の勧誘にご注意を~|不動産取引|東京都住宅政策本部

◆投資用不動産 特別相談窓口 に寄せられたご相談事例 

・昨今、不動産売買がオンラインで可能となり、不動産投資のハードルが低くなっている現状があります。
また、投資用マンション等の販売や買取りなどの不動産取引に関して、宅建業者から執拗な電話勧誘を受けたなどの苦情・相談も寄せられています。

・これらの状況に鑑みて、東京都では、本年4月から、投資用不動産 特別相談窓口を設置しております。 

 ➣こちらに寄せられた、ご相談の主な内容   
  ・執拗な勧誘行為に関すること苦情・相談  
  ・ファミリーレストランや喫茶店で、投資用マンションの買受申込・売買契約締結を行ったが、クーリングオフを主張し手付金の返還を求めたところ、業者からクーリングオフできないと云われ手付金の返還を拒まれた 
  ・投資用不動産の売買契約の手順についての質問 
  ・手付解除に関する質問・相談 
  ・購入代金等の融資が下りなかったため、ローン特約による売買契約の白紙解除をしたいが、売主業者から、別の金融機関を紹介するので審査を受けるように強く求められている 
  ・サブリース業者とのマスターリース契約が既に締結された物件を購入したが、購入前に詳しい説明は受けておらず、マスターリース契約の解約が容易ではないことを知らされないまま物件を購入した 
  ・仲介手数料についての苦情・相談  
  ・サブリース業者とのマスターリース契約の解除に関する質問・相談 
  ・賃料の滞納(入居者の滞納・サブリース業者の滞納) 
  ・賃貸管理業者の業務怠慢についての相談  
  ・入居中の修繕に関する相談 
  ・退去時の原状回復と敷金精算に関する相談  

★重要! 
しつこい勧誘は、宅建業法違反です。東京都知事免許の宅建業者からの執拗な勧誘行為が続いていて、断り切れず、ご意向に反して売買契約を締結してしまうということがないように、すぐに、都庁不動産業課に相談しましょう。
⇒ 民間住宅部 不動産業課 指導相談担当 (直通)03-5320-5071

 

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