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平成21年度 第1回 東京都住宅政策審議会企画部会(平成22年2月17日)における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

(人口減少・空き家)

○ 資料3のP.4によると、これからの未曾有の人口縮減が起こっても、東京都では、まだ大丈夫とされているが、もう少しシビアな見方をすれば、今後10年弱は大幅な住宅の需要減がやってくると考えられる。
 35歳は家の取得には一番いい時期であり、60歳前は可処分所得が最高でもう一回家を建て直す時期だが、そういう世代が皆右肩下がりになることをどう考えるのか。悲観的に見ずに、家の数が余ってくるのでどんどん建てる必要はないとも言えるし、反対に、供給側から見ると、ぜんぜん違ってくる。

○ 全体として人口が減っていく中で、東京都は人口が比較的維持され、周辺の人口減少が厳しい状況にある。東京都の住宅政策を考える場合に、東京都の中だけで考えるのでなく、例えば「首都圏住宅政策連絡協議会」を作って、東京都が音頭をとって進めることなどが必要な時期に来ているのではないか。

○ 空室の多さを実感したが、不動産業事業者によれば、都区部でも契約率が低下してきており、収入の30~40%減は当たり前の状況。
 最近の賃借人の傾向を見ると、50代くらいの生活保護を受けている方が増えてきており、空き家の古い賃貸マンションに住む方が増えてきている。これまでの賃料を、生活保護の住宅扶助費まで家賃を落として入居するケースが最近増えてきた。

(社会構造の変化、借家層と持家層)

○ 開発が始まって50年が経つと、1世の人たちの大半が亡くなり、60年目になると全く新しい姿形に変わるのではないか。1995年後半くらいから都心回帰ということで、超高層のマンションが増加してきたが、1945年から60年目の2005年目に、区内や駅近に、最初の居住者の孫世代が都心回帰のブームに乗ってマンションに入ったのではないか。
 これから郊外の第一世代、多摩川以西で猛烈な高齢化が起こり、また、環七西側から多摩川の間で、住宅の市街地としての更新が行われるが、これらの対応が場所的なポイントではないか。

○ 高齢者層に強い需要圧が来るが、持ち家層には、なるべく自力で公的な資金を入れずに、前期高齢者のうちに頑張ってもらうことを期待する。
 高齢の借家層は、今までの人生があまりうまくいかなかった人たちで、職を失うとすぐに家賃の負担が大変になる。年齢が上がると、いわゆる「たまゆら」問題に帰結してしまう。
 子育て前期層は、今までは借家から持ち家に住み替わる世代であったが、現在のこの世代は、就職氷河期世代でこれまでの終身雇用、年功序列賃金に乗れなかった人たち。
 20世紀の住宅政策は「所得分位は正規分布」を前提に講じてきたが、所得分布がロングテールになり、大量の所得が高くない人と所得が極めて高い人に分かれる中で、借家層への対応がポイントである。

○ 最終目的が明確な時代、例えば住宅の量が不足しているとか質が劣っている時代と異なり、現在は課題が明確ではないので、議論の枠組み自体が従来どおりでよいのかわかりにくい。
 一つの考え方としては、全体的なデータの俯瞰的な把握が前提だが、例えば、ある年代の具体的な都民についての生活シナリオを描き、その人は住宅では何に困っているのか、その人に住環境の整備で何が寄与できるのかなど、等身大の課題の把握を、5タイプくらいで具体的に検討する仕方もある。生活は連続しているので、そこから住宅で生活していることだけを切り離すことはできない。両面から考えていくことが必要。

○ 首都圏全体で見ると、東京につけが回ってくる可能性がある。東京の借家率は高いが、経済が厳しくなると、生活の糧を求めて一番厳しい人がチャンスを求め都市に集まってくる。東京は若者を大量にひきつけている一方で、高齢者も爆発的に増え、大量に残る可能性がある。

○ 借家住まいの若年層も多いが、今後持ち家が増えてくることは考えられない。今の市況を見ると、分譲マンションを購入して10年後転売したとすると、その間の経費や住宅ローン、管理費等を計算すると、借家もほとんど遜色なくなる。今後は、値上がりして転売し利益が出ることはほとんどない。土地つきのものは良いけど、特にマンションに関してはメリットがない。今後は、マンションを買わずに借家のままでいいという人が増えてくるのではないかと思う。

○ 生活保護で家賃扶助を受けて民間住宅に入ることと、公営住宅に入ることの相違点や共通点を整理していくことが課題である。また、これから借家が増えるが、借家をどう定着させ、安心して居住できるようにしていくかは大きなテーマ。

(福祉との連携)

○ 今後は福祉との連携をしていくべき。持家の後期高齢者も、単身で居住継続が困難になったときを考えると、住宅、福祉、医療との連携も必要。

○ 住宅と福祉の連携について、本格的に推進して行く時期にあるのではないか。若者貧困層や派遣切りの問題に対して、本来は公営住宅で対応できればよいのだが、それが十分でない状況を解決するために、福祉と住宅政策を一本化する時期に来ているのではないか。

○ 住宅政策と福祉政策の連携について、公的資金の使い方を考えると、自分でやれる人に対しては、情報提供など公的資金のかからない支援策を行い、本当に困った人に財源を重点的に充てていくことが必要ではないか。

(マンション管理、建替え等)

○ 優良マンション登録表示は、あまり利用されていないという感じがする。マンション管理アドバイザー、建替え・改修アドバイザーについても、もう少し利用してもらう方法を考える必要がある。
 管理組合運営がほとんど機能不全に陥っている状況があり、管理者管理方式などもう少し踏み込んだ課題について議論が必要。企業の方でも本当はやりたいのだと思うが、管理者の資格や資金管理等を考えると、管理会社が管理を行っても収入の割には責任が重いことなどから結局は進まない。都としての促進方策を考える必要がある。
 マンションの建替え実績が56件あるが、民間の分譲団地か公団・公社か、単体の建替えか団地の建替えか等を踏まえれば、建替えについて、より具体的な施策を検討できるのではないか。

○ 都の優良マンション登録制度が低調だということだが、マンション管理センターのマンションみらいネットというマンションの管理状況を広く知ってもらうサイトについても、登録がなかなか広がらない。その理由としては、居住している人にとってはあまり必要性が感じられないことや、消費者は重要事項説明で情報が得られるということがある。

○ マンションの管理制度メニューが非常にたくさんあるが、利用が進んでいないことについて、制度を実際に運用する区にとって使いにくいのか、管理組合や区分所有者にとって使いにくいのか、などについて検証が必要ではないか。

○ マンション建替え事例が、マンション建替え円滑化法施行後に円滑化法が適用されたものか否かを踏まえた上で、円滑化法が使いにくいマンションについて、東京都スキームのようなものを検討できないかという問題意識を持っている。

○ 資料6のP.19、築30年以上で一度も大規模修繕をしていないマンションが四分の一もあることが事実であって、コンクリートが落ちてくるようなことになれば外部不経済。管理に関して修繕勧告することなどについても考えていかねばならない。

○ 区分所有権の解消についての国への要望に関して、建替えはマンション再生の最後の手段だが、特に高齢化が進んだ郊外のマンションについては、建替えを進めるより、むしろ解消した方がいいのではないかと思われるケースが多々ある。

(耐震化)

○ 資料6のP.22、耐震化の現状については、具体的にどのような推計方法による計算をしているのか。また国や都の施策の効果はどうだったのか。
 国の補助金が自治体の上乗せ部分が出せないために未消化となり、耐震化が進んでいないという指摘もある。

○ 住み替え支援機構などの住み替えは、応募はあるが進んでいない。その一因として、利用したいと考えている70歳前後の高齢者の住宅の多くは、旧耐震の建物で耐震改修しないと借りてもらえないということがある。
 個人が意思決定して動かない限り、政策が進まない面もある。個々一人ひとりの問題と政策がどう関連を持っているのかを整理していくことが必要。

○ 耐震基準を100%満足していなくても、現状より少しはよくしたものであれば評価するというように理念を転換し、政策を変えていけば、もっと普及する可能性が出てくると思う。

○ マンションの耐震診断が進まない理由として、耐震診断の結果が悪かった場合、改修できないと自分が転売するときにマイナス要素となるということが考えられる。

○ 住宅の耐震化について、合意形成の支援などの普通の対応だけでは目標達成は困難だろう。お金がなくて、耐震診断そのものができないだろうし、診断しても改修までいける自信がないから結局診断しないということになる。

○ 大規模修繕はある程度定期的にやらないといけないとつけが回ってくるので、居住者も積極的に対応するが、耐震診断や工事については、耐震診断をしない場合の大規模地震が来たときのリスクを、例えば「建物の7、8割は、震度6以上で、建物が半倒壊する」など、もう少しわかりやすく情報提供していく必要がある。

(環境への配慮、長寿命住宅)

○ 住宅に住む人の健康の視点が重要。断熱性能が上がると省エネルギーにもつながるが、あわせて住む人の健康被害を少なくできる。都でも健康長寿医療センターで研究をしているが、住む人の健康の視点も入れてほしい。

○ 長期優良住宅の認定件数を増やしていくことが当面の目標だが、特に共同住宅について促進させていくことが大きな課題。4月以降の市況も見ながら、民間で動くものが出てくると思うが、同時に、公共住宅でも積極的に推進して、いい事例が出てくることを期待している。
 耐震性は、特に中層住宅ではコストアップにつながる。更新性に関しては、設備配管の設置位置についてかなり制約があり、特に中層住宅について専用部分に置けないことについて技術的に緩和が必要。また今後省エネ性能基準が厳しくなることが想定されるが、住宅だけでは解決できない部分が出てくるので、エネルギーオフの考え方や、他のインフラ整備と合わせて、検討していかねばならない局面も出てくる。

○ 省エネリフォームや太陽エネルギー利用への補助制度は重要と考えている。国では太陽光発電に補助を行っているが、都の太陽熱利用の補助は、太陽熱利用は効率が高いことから評価できる。補助の利用状況や達成目標を教えてほしい。

(施策の方向性、その他)

○ ストック、資金、住環境の中身を効率的に動かしていく仕組みが必要。これまでは、情報提供は申請が出たら受け付けるということが多かったと思うが、これからは、必要なところには積極的に資金も情報もアクティブに動いていく必要がある。特に問題を抱えている人は自分では動けないし、情報に対しても孤立している人が多い。
 政策の統合、ワンストップサービスのような効率的な政策のあり方を考えるべき。

○ 情報提供は全てを行政が行うことは難しいので、NPOなどを活用していくことが考えられる。

○ 最近は家賃滞納者が増えてきているが、零細の家主は法的な処置が困難な状況。法改正も含めて住宅政策の中で総合的に考える必要がある。

○ 木密の整備促進に関連して、災害発生時の避難通路には狭いところが多い。特に中野、杉並は人口密集地であり、古い木造の建物も多く、狭い道路に加えてブロック塀が非常に多いが、塀が倒壊したときの具体的な対策をどのように考えているのか。
 また、人口密集地に限って道路が狭く、4メートルに満たない42条2項道路が多い。区と連動するとは思うが、検討していく必要がある。