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平成27年度 第1回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成27年4月27日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成27(2015)年6月11日

資料

主な意見の概要

【言葉の定義について】

○ 「管理組合活動が不活発」「管理不全の兆候がある」「管理不全」という言葉の定義は、管理状況の報告項目を何にするのかということと関連する。項目・内容と判断基準を同時に議論すべきだが、かなり難しい作業であり、丁寧に進めていく必要がある。例えば耐震改修の設計までしたものの、補助金を受けても金銭面で合意形成が取れず、断念するマンションもある。経緯と結果が繋がらず、成果が上げられないマンションも多い。

○ 管理組合活動が不活発なマンションを一言でいうと「主体性がない」ということである。例えば、特定の区分所有者に管理運営を強く依存している場合、その方が区分所有者でなくなった瞬間に管理不全に陥ってしまう。また、管理組合に主体性がなくとも、管理会社を通して管理がきちんと行われているのであれば、必ずしも不活発とは言わない。

○ 「管理組合活動が不活発」ということは、適正な管理ができていないことの原因であり、むしろ、その結果として生じる「大規模修繕がなされていない・長期修繕計画がない」というような客観的な現象を捉えることが大事である。

○ 今後の施策展開を考えると、適正管理促進対象のマンションと再生促進対象のマンションに分ける必要がある。適正管理促進対象のマンションは、大規模修繕を実施すれば何とかなるにもかかわらず、それが行われていないマンションである。再生促進対象のマンションは、大規模修繕を実施するにしても既に遅く、管理だけではどうにもならないマンションである。

【マンションの管理状況の把握と管理不全の予防・改善のための支援・指導について】

○ 管理状況の報告については、例えば通常の総会の中で一定の報告が行われることで組合員の中の意識喚起を促していくという効果も大きい。外部への報告が内部への報告や意識づけと連動するような形が良いのではないか。

○ 行政側から報告を求めるマンションと、マンション側から行政との関係を期待して申し出るという二つの構成にしてはいかがか。報告を求める際は、例えば築30年以上とするなど、単純な基準が良い。マンション内で認知症の方が徘徊するなど、本来管理組合の役割ではないが、やらざるを得ない実態が現実としてある。そういうことで困っているマンション側からむしろ積極的に報告してもらうことで、一定の福祉情報が収集できれば、今後の行政の検討材料になり得るのではないか。

○ 高経年マンションや自主管理マンションでも、例えば大規模なマンションではスケールメリットを活かし、事務員を雇うなどして良好な管理を行っている場合もあるため、規模の大小を報告対象の基準に入れ込んではいかがか。また、立地条件により建替えも土地売却も困難で、現法律下では再生しにくいマンションも報告の対象とする必要があるのではないか。

○ 管理状況の報告の対象となるマンションには、例えば経過年数や、衛生上・安全上明確である等の客観的な基準をあてはめるべきである。管理委託している場合は管理不全にならず、自主管理の場合は管理不全の恐れがある、というのはやや乱暴な区分けである。

○ 報告を求める管理不全マンションの要件に、「環境・安全面に問題がある」と周辺住民が自治体に対し苦情や問い合わせをした、という事項があれば明確になるのではないか。

○ 管理状況の報告にあたっては、建築関係の設備点検(3年毎)との整理が必要である。消防法の設備点検、空調設備点検は1年毎である。こうした情報を基本情報として把握し、リンク付けすることも必要ではないか。

○ 管理不全マンション、管理不全の兆候があるマンションをどのように探すかということが重要である。空き家の調査では、外見から生活の状況を伺うことができるため、地域や福祉サイドが最もよく情報を把握している。福祉の観点も含めて総合的に探さないと、管理不全マンション等は見つけられないのではないか。地域毎に状況も異なると思われるので、地域がしっかりと把握できる仕組みがあるとよい。

○ 報告を求める管理不全マンションと管理不全の兆候があるマンションの要件を、可能な限り一致させた方が分かりやすいのではないか。

○ 管理不全マンションや、その兆候があるマンションに管理情報の報告義務を課すのは、現実的には実現しづらい部分がある。むしろ、生命・身体の安全等を主な目的とし、空き家特措法の趣旨も踏まえながら、管理不全を法的に位置づける方策を考えた方が良いのではないか。

○ 条例により管理情報を提出させるのは、行政介入を目的としているのではなく、管理組合内の合意形成の支援を主眼としている。長期修繕計画の作成・居住者名簿の作成・地域の人に向けて連絡先を掲示、といったことは、通常管理組合内での合意形成が難しいが、条例で定められていると進めやすくなるという効果がある。罰則や介入ではないその他の効果についても少し配慮したほうが良いのではないか。

○ 管理不全の兆候があるマンションは、求めても報告しないものがほとんどである。直接訪ね、報告を求める際の根拠としても条例が必要である。

○ マンションと空き家問題がうまく対応するかわからないが、地方都市では空き家問題が深刻であり、数件でも行政コストは多大である。管理不全マンションが実際多数出てきたら、行政コストは膨大なものとなる。そういったマンションは概ね連絡がつきにくく、合意形成も困難な状況である。管理不全に陥る前段階で、情報を捉える仕組みが重要であり、そういう意味で条例化の検討が必要である。

○ 条例という法律上の形式で、都民全員ではなく、ある一定の都民にだけ特別の義務を課すということ、そのこと自体について議論が必要である。単なる報告義務だけとするのか、情報公開まで義務付けるのか、順次検討していかければならない。その上で、義務違反に対する制裁等の法的効果として、例えば罰則や強制公表等を条例に入れ込むことの可否についても検討する必要がある。

○ 管理組合活動の実情を見ると、ほとんどが不活発とも言える。マンション管理の基本的事項について関心を高める活動を行っているが、役員のなり手不足などの基本的な問題以前に、そもそもなぜマンションを選んだのかわかっていない人もいる。むしろきちんと管理しているマンションを際立たせる方策の検討が重要である。

○ 高経年の団地等では、居住者の高齢化も進み、自主的に高齢居住者の見守り活動を行っているところもある。高齢者の健康状態はあっという間に変化する。マンション管理をきちんとせよと言われても、人材不足等でそうできない実態があることにも配慮する必要がある。形式的なことばかり考えていては実態と乖離してしまうのではないか。

○ 住宅行政と福祉行政が連携して支援しなければ、いくら管理組合に管理の適正化を求めても、足元から崩れてしまうのではないか。マンション管理士を派遣する、管理会社がサポートできる体制を作る、など支援の充実を図る必要がある。

○ 例えば、高齢化により耐震化などの合意形成がなかなか進まず、塩漬けとなったマンションを流動化させるといった敷地売却の方法や、建物を残しながら金銭化し、再生を図っていくというような仕組みの中で、居住者の高齢化という問題を考えていく必要があるのではないか。

【管理情報の公開について】

○ 管理状況の良いマンションがより評価されることが重要である。

○ マンションデータベースの情報公開の目的は適正な管理を促していくことであるが、公開することによりどの程度の効果があるのか不明である。データベースを公開するとなると、それなりの情報・件数の網羅性がないと現実的には成り立ちにくいのではないか。

○ 管理の適正化・中古市場の活性化を進めるために管理情報は必要だが、管理情報のコントロール権は管理組合にあるため、その公開に当たっては管理組合の承諾が必要である。

【その他】

○ 現在、築40年となる昭和50年代頃の購入者と10年前の購入者では、当時の政策や社会情勢等の背景により、マンションの購入意欲や管理に対する意識が異なるため、一律には考えられないのではないか。

○ 築30年以上の古いマンションでは、設計図書はデベロッパーが保管し、管理組合に引き渡すというルールができていなかったため、管理組合が保管していないケースが多い。