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平成27年度 第2回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成27年5月26日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成27(2015)年9月28日

資料

主な意見の概要

【マンションの適正な管理の促進について】

○ 築年数の経過に伴う建物の老朽化や、居住者の高齢化、賃貸化の進行は、管理組合にとって大きな課題であるが、空き住戸の増加についても、所有者が管理組合活動に関わりを持たなくなるなど、深刻な問題となっている。

○ 高齢化によって管理への無関心化が進む、ということではなく、むしろ、関心を持っているが高齢化により管理活動を敬遠する、ということなのではないか。

○ 管理や修繕に無関心な区分所有者に向けた具体的施策として、独自にホームページを作成し、総会やイベントの告知等、居住者間のコミュニケーションを図っているマンションに対し、その構築に対する支援をしてはどうか。こうしたホームページの存在を把握できれば、マンション管理に関して行政から伝えたい事項をインフォメーションすることができるのではないか。

○ 条例化の検討にあたって、管理組合の責務を位置づけ、登録・報告を義務付けるという方向には賛成だが、義務が伴うのであれば何らかのインセンティブが必要ではないか。

○ 管理不全を少しでも改善していくために、区分所有者が管理を良好に行い、それが行く行くは資産の評価につながる、といった循環をうまく進めることが必要である。そのための一つの方法として、条例化によってある程度義務化し、それを市場の評価につなげていくことについて、より具体的に議論する必要があるのではないか。

○ 管理組合への支援策を検討するにしても、そもそも管理組合のデータが整備されていないということが大きな問題である。既存マンションの取引における管理情報の提供に関して、業界団体が作成している共通様式の項目を都が例示することで、管理組合が情報提供するに当たり、その項目を取り入れる、といったきっかけを作ることも必要なのではないか。

【外部の専門家を活用した管理方式について】

○ 外部の専門家を管理者等に活用する管理方式は、非常に限定的な場面で用いるものであり、従来の管理方式と並んで有効な選択肢の一つであるとまでは言えないのではないか。高度で複雑な管理が求められている状況であっても、従来の区分所有者中心の管理方式が基本であり、そこにアドバイザー・コンサルタントとしてマンション管理士などの専門家を活用していくことが効果的である。

○ 外部の専門家を管理者等に活用する管理方式は、現行制度上は利益相反行為の恐れがあり、また管理者等の責任が法的に明確ではない、という課題もあるため、あくまでも補完的な位置付けと捉えるべきではないか。

○ 外部の専門家を活用した管理方式は、区分所有関係に拘束される当事者だけで運営が限界に達した際の「万策尽きた場合のセーフティネット」であり、最後の手段という補完的な役割を持つのではないか。

○ 従来の管理方式が定着している中で、外部の専門家が一年に一回の総会で監督できるのかという疑問がある。

○ 外部の専門家を活用した管理方式を一般化してしまうと、無関心な管理組合が安易に飛びついてしまうのではないかという懸念がある。日本のマンションの管理のありようが大きく変貌してしまう。

○ 管理組合の構成員以外の者を役員・管理者にするということは、あくまでも多様な管理方式の一つであり、これを採用するかどうかは管理組合で決めるものである。たとえこの方式が標準管理規約等で打ち出されたとしても、管理組合の自主性や主体性を害するとは言えないのではないか。

○ 高齢化や賃貸化等により、従来の管理方式のままでは管理が立ちいかなくなる恐れのあるマンションが、外部の専門家の関与を認めるという選択をし、それが管理方式としてうまく機能するのであれば、外部の専門家を活用した管理方式を、最後の手段とまで位置づけなくともよいのではないか。

○ 管理組合の判断に委ねるとしても、そもそも管理組合にきちんとした判断能力があるのかという問題もある。標準管理規約・コメント等に記載されれば、それを根拠にしてそちらに流されていく傾向もあるのではないか。外部の専門家の活用に当たっての考え方や留意事項等についてガイドラインにきちんと記載する必要があるのではないか。

【新築分譲時における管理に関する説明の充実等について】

○ 今後建替えが難しい状況の中で、デベロッパーなどの供給側に対し、長期優良マンションの供給促進も含めて、メンテナンスフリーとまではいかないが、管理に十分配慮したマンションの供給を要請してもよいのではないか。

○ 分譲時にデベロッパー側にどこまで要求できるか、また、どこまで実行してもらえるかという問題がある。本来は、管理のしやすさや適正な管理のためにどういった設計をするかということが起点となるはずだが、現状では二の次になっている。分譲後、分譲業者は適正な管理のためにどういったことをすべきか、ガイドラインにしっかり記載する必要があるのではないか。

○ 分譲事業者は、分譲後のリフォームや買替えなどを含めた顧客との繋がりを重視しており、また、自らのブランドを大切にする傾向もあるため、分譲後の「管理のしやすさ」や「住みやすさ」はかなり重要な要素となっている。こうした要素が市場で受け入れられ、評価されることが重要である。

○ 分譲後数十年経ち、居住者が高齢化すると、当初から設置されていたジムやプール等が過剰設備となり、その管理費用に苦しむということがある。管理費の高さが中古価格にまで影響を及ぼすこともあるため、供給当初から将来の管理について考えておくことが重要である。

【老朽マンション等の再生の促進について】

○ 緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に対する都の助成制度もあり、緊急輸送道路沿道のマンションの耐震化は進んでいるが、耐震改修まで至った割合はおそらく高くないのではないか。その問題意識をしっかりと位置付ける必要があるのではないか。

○ 実際の建替え件数はごくわずかであり、現実的には建替えは困難である。建替えが困難なマンションは、定期的な改良工事や改修工事を繰り返して長く持たせるという選択肢が現実的であるため、そうした取組に対する行政の支援が必要ではないか。

○ 人口減少、空き家の増加という背景もあり、より大きくして余剰部分を売却するといった現行の建替えの仕組みは、今後難しくなってくる。今のマンションと敷地を別の形で使える仕組みにしていかないと建替えは進まないのではないか。そういった形であっても流動化していけば負担も軽減でき、それによって合意形成も進めやすくなるのではないか。

○ 単に敷地として売却するのではなく、建物を有効に活用していけるような仕組みを構築していく必要があるのではないか。例えば、土地と一緒に古いマンションを売却し、リフォームして高齢者施設を整備したり、賃貸化、リモデリングしたりするなど、様々な市場に繋げて需要を作り出し、実質的なマンション再生を進めていく、といった視点も重要である。

○ 再生事業を手掛けるのは事業者であり、有効な活用方法を提案できる存在である。再生事業に積極的に取り組んでいる事業者を支援するような視点も必要ではないか。

○ 自己敷地だけでの建替えが困難なため、隣接地の取り込みを検討するような場合、現行制度では、隣接敷地の所有者は、一旦土地を譲渡してしてから優先分譲を受けることとなり、権利変換と同等の税制優遇を受けることができない。また、事業主体になれないという理由から事業参加に抵抗がある等、制度面での課題が残されている。

○ まちづくりと一体となってマンションの再生を進めていくにあたり、メリハリをつけて地区を選ぶ必要があるが、同時に、救済措置がないと建替えが進まない敷地がどの程度潜在するのか、といったこと等について基礎的な調査が必要なのではないか。

○ 隣接地を取りこんだマンションの建替え、団地の建替えの実現などは非常に難しいが、法制度の動向に併せて、行政による様々な支援を進めていけば、最善の選択肢としての建替えも今後十分に増えていくのではないか。