島しょ空き家サミット

目的
豊かな自然と温かな人々に囲まれた東京の島しょ地域。その島々に点在する「空き家」の可能性を、当事者・地域の担い手・専門家・次世代が一堂に会して“見て・聞いて・考える”サミットです。
実家の管理や片づけ、費用や相続、活用や売却、移住・二拠点など──気になるテーマを、撮影会場からオンラインでつないで、具体的な知恵と選択肢に変えていきます。あなたの「そろそろちゃんと考えたい」に、最初の一歩を。
概要
日程
令和7年11月15日(土)10:00〜16:00
たくさんのご参加ありがとうございました!
アーカイブ動画
コンテンツ
chapter 01 オープニング(00:00:00〜)

小池都知事からビデオメッセージで八丈島・青ヶ島における令和7年台風22号・23号の被害に対してお見舞い申し上げるとともに、「復旧・復興の中で重要な役割を果たし得るのが空き家である」と開催挨拶がありました。
その他オープニングでは、台風被害による義援金の募集の呼びかけを行いました。
chapter 02 空き家ワークショップ成果発表(00:04:54〜)

芝浦工業大学 空き家改修プロジェクト
関係人口の拡大を創出するため、畑を介した島民と宿泊者をつなぐ、宿泊施設の提案がなされました。
また、模型も作成しており、フィールドワークそのものの高い精度について評価を受けました。

東京都立大学 饗庭研究室
人口回復を目標にお試し移住【来る】・移住【住む】・定住【来る】の3つの提案がなされました。
特に【住む】で提案されたサークル部屋は移住者と島民が交流空間として高い評価を受けました。

東京都立八丈高校
島に点在する空き家をどう活かすか、高校生ならではの発想でアイデアを出し合い、提案しました。
● コメンテーター

佐々木 加絵 氏
株式会社AOMI代表
YouTube「青ヶ島ちゃんねる」運営

野村 哲 氏
株式会社日建設計
都市・社会基盤部門都市デザイン部 部長

岩田 亮一
東京都住宅政策本部
民間住宅施策推進担当部長
chapter 03 空き家の利活用や移住・定住支援にかかる活動報告(01:41:43〜)

新島村
発表者
新島村役場 企画財政課 企画調整室 主事 桑元 康成 氏
解体にかかる海上輸送費等の島ならではの住宅課題があることに触れ、その対策として普及啓発のためのポータルサイトや総務局事業の移住体験住宅等の取組と効果について紹介されました。

奥多摩町
発表者
奥多摩町役場 子育て定住推進課課長補佐兼若者定住推進係長
山宮 淳也 氏
充実した独自の子供・子育て支援推進事業や空き家バンクの運用方法の紹介とともに、技術職員が不足する中、崖条例や旧耐震等の課題に直面していることについても言及がありました。
chapter 04 パネルディスカッション 空き家から始まる島の未来〜活用と移住がもたらす可能性〜(02:16:55)

仏壇のある家を手放せられない、改修する人間が少ないといった離島特有の問題に対して、他県の離島の取り組み事例が共有されました。(仏壇のある家を期間限定で宿にしている・「旅する工務店」が空き家改修をしている等)
また、各パネリストにより空き家のマッチングにおける成功事例が紹介され、島の地域活性化へつながる可能性等について議論されました。
● 登壇パネラー

鯨本 あつこ 氏
認定NPO法人 離島経済新聞社
代表理事

中村 圭 氏
一般社団法人
シマクラス神津島 代表理事

柳沢 寿樹 氏
公益社団法人 ふるさと回帰・移住交流推進機構 東京多摩島しょ移住定住相談窓口相談員

宮川 卓也 氏
七島信用組合 八丈島支店
支店長 理事兼任
chapter 05 ゲストトークショー 実家が空き家に?今すぐ知っておきたい管理と活用術(03:16:50〜)

松本明子氏からは実家を相続し、管理から売却にいたるまでのエピソードの紹介があり、対談相手の上田真一氏からは空き家の維持管理のポイント等を分かりやすくお話いただきました。
まとめとして、「早めの対応が大切」「前向きに活用を」と島民にメッセージを送りました。
● 特別ゲスト

松本 明子 氏
タレント

上田 真一 氏
NPO法人空家・空地管理センター代表理事
インタビュー

開催当日は、官民学それぞれの立場から空き家の利活用や移住定住についての議論や提言をいただきました。
登壇いただいた皆様に、島しょ地域における空き家の課題、現在行われている取組、今後の展望などをインタビューしました。
サミットでの議論や提言の裏側をうかがい知れる内容になっておりますので、ぜひ閲覧ください。
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「島で育ったから、島の気持ちがわかる」YouTuber佐々木加絵さんが語る、島を選んでもらうためのアイディア

都内離島の空き家活用をテーマに開催された「島しょ空き家サミット」。生まれも育ちも青ヶ島で、Youtuberとして青ヶ島の日常を発信している佐々木加絵さん。島しょ空き家サミットに参加し、八丈島にある空き家を改修して島のために役立てたいという学生たちの熱意あふれる発表をコメンテーターとして間近で観てもらいました。プレゼンを聴いた直後の第一声は「本当に素晴らしかった」の一言。厳かな空間の中で披露された学生たちによるプレゼンテーションは、予想以上に完成度が高く、模型や資料の作り込みにも驚かされたという。
離島の空き家活用に共通する課題
八丈島を例に挙げながら、佐々木さんは「家があっても手放したくない人が多い」と指摘する。家族が帰省するときだけ使う、思い出があるから残したい─そんな理由から、空き家でも売却や長期賃貸には踏み切れない…島育ちだからこそ、島民の気持ちがわかる。
しかし、そうした空き家も「期間限定で貸すのであれば、活用したいと思う人はいるはず」と語る。学生たちが提案したシェアハウスのように、一定期間の移住体験として使う方法であれば、所有者の心理的ハードルも下げられるのではないか、そう期待を寄せる。子どもたちへのアプローチは「YouTubeが鍵」

島への移住促進には若い世代への発信も重要だと佐々木さんは話す。青ヶ島は“憧れの島”としてのブランド力があり、YouTubeで島の生活を紹介すると子どもたちからの反響も大きい。一方で、八丈島には「意外と暮らしの発信が少ない」と感じており、リアルな日常を見せることで島留学や暮らしの魅力を伝えられると語った。
「シェアハウスで暮らすYouTuberが人気ですよね。子どもたちはああいうのを見て『ここに住んだらどうなるんだろう』と想像するんです」
暮らしの“解像度”が上がれば、島に行きたいという気持ちにもつながる。それは空き家活用の一歩目にもなるという視点だ。学生たちが示した新しい可能性

最も印象に残ったのは、芝浦工大の学生が提案した、島の人との交流とプライベートが緩やかに接続する空間設計だという。普通のホテルや民宿とは異なる“体験型の宿泊施設”に、佐々木さんは大きな可能性を感じたそう。
「島には静かに過ごしたい人もいれば、地元の人と話したい人もいる。ニーズに合わせて選べる場所があったらいいと思うんです」
例えば「おしゃべりハウス」と名付けて、交流を楽しみたい人が集まる場所にしてもいいと楽しげに語る。宿の個性が話題になれば、訪れる人も自然と増えるはずと笑顔を見せた。起業希望者に島を選んでもらうために
また、今回、学生の発表を聞いて、あらためて「島に来たい人が情報を得られる場所の必要性」を感じたと話す。特に事業を始めたい人にとって、短期滞在やお試し移住ができる空間は欠かせない。
「ずっとホテル暮らしでは現実的じゃないし、地元の人とも関わりにくい。まずは1カ月だけでも借りられる場所が必要なんです」
「八丈島などは事業チャンスも多く、東京都にもこうしたチャンスを取りこぼさないための仕組みを整えてもらえるといいですね」と語った。青ヶ島の魅力と、今後への期待
最後に青ヶ島の魅力を聞くと、「コンパクトでまとまりがあること」と即答した。人口160 人ほどの小さな島は、人との距離も、生活のインフラも非常に近い。それでいて360 度に広がる水平線という特別な環境は、他の島にはない魅力だという。
今回のイベントについては「これで終わらせず、継続してもらえると嬉しい」。学生のアイデアが実現し、翌年にはその成果を報告する─
そんな未来があれば、島も学生も、そして空き家活用の取り組みも大きく前に進むと感じたという。
「本当にいいイベントでした。ぜひ次につなげてほしいですね」
佐々木さんの言葉には、離島の未来を信じる力強さが感じられた。
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空き家から地域をデザインする

空き家ワークショップ成果発表のコメンテーターとして参加した株式会社日建設計の野村哲さん。学生の発表を聴いた感想や、島しょ地域の課題、そして今後の展望について伺いました。
若い世代の力が島を変える~学生たちに寄せる期待~
私自身も学生時代に建築とまちづくりを学んでいたので、少し自分事のような感じもあって新鮮でした。発表してくれた学生たちは非常に優秀で、熱心に提案されていて素晴らしかったです。
空き家の内部だけでなく、庭や土間といった外部空間を含めたプレゼンテーションをしてくれました。ランドスケープや外構はコストが比較的安いにもかかわらず、地域に良い変化をもたらすことができるという意味で費用対効果も大きいですし、大きな可能性を感じました。
若い人たちが島の課題にトライすることは、本当に意味があると思うんです。今の島は若い人が少なく、課題解決の糸口を見出しにくい状況にある。だからこそ、学生のような外部の視点が貴重なんです。
だからこそ、今回のような単発のイベントで島との関わりを終わらせるのではなく、それぞれの人生の中に島を取り込んでもらって、島との往来をライフワークにしてもらえると嬉しいなと思いました。
学生は、いわば最大のインフルエンサーです。若い人たちが島にいること自体がプラスの影響を与えますし、学生にとっても現場でのフィールドワークは貴重な経験になるのではないかと思います。
建築屋はどうしてもハード面だけを考えてしまいがちですが、僕たちの使命は「世の中をより良くしていくこと」。学生の発表でも垣間見られましたが、建築を作るだけではなく社会的な意義を持ってこれからも島に関わってほしいですね。「家はあるのに住めない」ジレンマを解く2つのカギ

移住を希望する方と空き家を持つ方のマッチングの難しさに課題があると思っています。島に移住したいと思っている方は多くいらっしゃいますし、島には活用できる空き家がないわけじゃない。にもかかわらず、その空き家が活用されていないんです。この課題を解決するには、行政やNPOの方々が中心となって、空き家を持つ方々や地域住民を巻き込んで、その理解や共感を得ることが何より重要です。
都市部では家賃収入や売却益といった経済的メリットが解決の糸口になりますが、島ではそうはいきません。まずは、人と人との信頼関係がカギになると考えています。
僕たち民間企業ができることもあると思っています。仮に事業を始めることができても、赤字が続いて、また空き家になってしまっては意味がありません。そうならないためには、たとえ儲からなくても持続できるような事業計画が必要です。
民間企業が空き家を活用した事業を継続し、広めていくことで、新しい産業が増える、観光の魅力がより高まる、人口が増える…そんな「社会的インパクト」を島に与えることができるといいですね。島外の人間だからできることがある

空き家や遊休不動産を使ったワークショップを開催したいですね。単に建物をどう使うかだけではなくて、その後きちんと運営できるかどうか、事業収支まで含めて考える実践的な内容にしたいです。地元で実際に事業を行っている人や金融機関の人も巻き込んでできるといいなと思っています。
それと、島の魅力を広く発信すること。たとえば八丈島には温泉が6箇所もあるんですが、こうした魅力ってあまり知られていないんですよね。私は島外に住んでいる立場だからこそ、島の素晴らしさを外の人々に伝えて、実際に足を運んでもらうきっかけをつくれると考えています。
最初は自分が島の外の人間であることにコンプレックスもあったんです。でも、島の外の人が島の魅力を発信して、そこから新しい移住者や事業者が生まれるかもしれない。私はそんな島のサポーターでありたいですね。
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「都内にいながら自然と暮らせる。その可能性を一人でも多くの人へ」奥多摩町役場・山宮淳也さんが語る、空き家活用と移住支援

東京都でありながら豊かな自然に囲まれた奥多摩町。移住定住施策の一環として空き家活用に取り組む、奥多摩町役場 子育て定住推進課の山宮淳也さんに、現場で感じる課題や移住希望者へ届けたい想いを伺いました。
若い世代の発想が、空き家活用の可能性を広げる

学生たちのワークショップの発表にはすごく刺激を受けました。普段は地元の大工さんや設計事務所とのやり取りが中心で、どうしても考え方が固まってしまいがちです。でも学生さんたちは「古いものを新しく見せる」という視点で空き家を捉えていて、その工夫や発想がとても新鮮でしたね。
こうした若い世代の方が将来、奥多摩町の空き家活用に関わってくれたら本当にありがたいです。今後、大学とのつながりを町として持てれば、新しいアイデアを取り入れた空き家活用の可能性を感じます。活用が進まない空き家、その理由とは?
町が行った調査では、約300件が空き家で、そのうち50件程度がすぐに活用できるような状態のよいものであるとわかりました。これらを空き家バンクに登録したり、寄付を受けて町営の若者住宅として整備したいところなのですが、なかなか活用がスムーズにいかないのが現実問題です。
まず、空き家の相続が済んでいないということがあります。所有者が確定しないと、売却や寄付の手続きが進められない。また、リフォーム費用が想定以上にかかってしまうケースも多いんです。外見は問題なさそうでも、壁を剥がすと柱が腐っていたり、床下にシロアリがいたり。結局、新築が建てられるほどの金額になることもあります。
空き家は個人の資産ですから、売る、貸す、解体するなど最終的には個人のご判断となります。また、空き家特措法も施行されたため、法律と奥多摩町の空き家活用事業を空き家所有者に周知し、理解してもらうことがポイントだと考えます。空き家を使った定住施策のこれから

奥多摩町では、少子高齢化対策として、若者・子育て世帯の移住・定住を推進するため、町営若者住宅を活用した定住施策を長年続けており、入居者の約4割が定住してくれていまして、この数字は担当部署としては成功していると感じています。
ただ、日本全体で若年層人口が減少し、結婚年齢も上がっている今、若者だけをターゲットにしていいのか、方向性を見直す時期に来ているとも感じています。
奥多摩の魅力は、豊かな自然がありながら都心へのアクセスも良いこと。JRも運行していることから、気軽に移住を試すことができると思います。さらに「東京都」ということも大きな強みで、様々な「都の支援」も受けることができます。この「都内にいながら自然と暮らす」という選択肢を、もっと多くの人に知ってもらいたいです。そうすれば定住につながる方も、もっと増えていくんじゃないかと思っています。
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学生の発想から新たな発見!新島村役場・桑元康成さんが考える、島への移住と住宅課題の解決策

移住・定住や空き家対策を担当する新島村役場 企画財政課の桑元康成さん。
2024年に東京23区から新島へ移住し、行政の立場と移住者の視点、その両方を持ちながら島の課題に向き合っています。新島ならではの住まい事情、そしてこれからの取り組みについて桑元さんに伺いました。「家を直す」だけで済まない、島の住まい事情

島で暮らすうえで、どうしても避けられないのが「物を運ぶコストの課題」です。生活に必要な物資だけでなく、家を建てたり直したりするための資材も船で運ばれます。その分、費用がかかり、「空き家を直したい・解体したいけれど、踏み切れない」という声につながるケースもあるんです。また、古い家屋の場合は、耐震面などの理由から、思うように改修が進まないケースもあります。そうした事情が重なって、空き家があってもすぐに活用できないのが現状です。島の方からは「このまま放っておいて大丈夫?」と心配される声も聞きますし、移住を考えている方からは「思っていたより住める家が少ないんですね」と驚かれることも少なくありません。
一方で、新島は土地や家への思い入れが強い方も多く、屋号が残る文化もあります。「家」というものが地域に深く根ざしているので、「先祖代々の土地を簡単に手放せない」という気持ちがあるのも自然なことと言えるでしょう。ただ、実際に移住して来られた方に対しては、距離感を大切にしながら受け入れてくれる、穏やかな空気のある島だと思います。行政に気づきをもたらした、学生たちの視点

「島しょ空き家サミット」では、建築を学ぶ大学生の皆さんが、空き家の活用について自由な発想で提案してくれました。どのアイデアからも、島をよく見ようとする姿勢が伝わって、とても刺激を受けましたね。
特に印象的だったのは、「家」だけでなく、「人との関係」まで含めて考えられていた点です。島で暮らす以上、建物だけ整っていても、地域との関わりがなければ長く住み続けるのは難しい。その視点を、学生の皆さんが自然に取り入れていたことが印象に残っています。
私自身、新島に移住してきた一人です。役場の職員として地域に関わる中で、「もっと島のことを知る必要があるな」と感じる場面もありました。だからこそ、地域の中に入って、住民の声を丁寧にすくい上げながら活動している民間団体の存在は、とても心強いです。
今回のワークショップの発表は、行政だけでは気づきにくい視点を改めて教えてもらえる、貴重な機会でした。移住者の一人として、行政としてできること
島に暮らす方や移住を考えている方の声を丁寧に聞きながら、東京都や関係団体と連携し、できることを着実に積み重ねていきたいですね。
空き家や移住の課題は、建築や法律など幅広い知識が関わってきます。役場だけで完結できるものではないからこそ、専門的な知見を持つ方々と関係を築くことが大切だと感じています。また、行政では担当者の異動がつきものです。人が替わっても、これまでのつながりや対応の質が途切れないよう、継続的に支援できる体制を整えていきたいですね。
新島は、「来るもの拒まず、去るもの追わず」という、ほどよい距離感のある島です。私自身も移住前は不安がありましたが、今は穏やかに暮らせています。そんな実感を大切にしながら、これから島に関わる方々を支えていけたらと思います。
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「島の空き家を動かすためには、まず島民の気持ちから」離島経済新聞社・鯨本あつこさんが考える信頼から始まる空き家活用とは?

15年にわたり全国の離島を取材し、島の声を伝え続けてきた離島経済新聞社。その代表理事であり、『ritokei』統括編集長の鯨本あつこさんは、空き家の問題を「建物」そのものだけではなく、「人と人との関係性」というフィルターを通して見つめてきました。パネルディスカッションではファシリテーターを務めた鯨本さん。今回の島しょ空き家サミットに参加して改めて感じたこと、そして離島を発信しているメディアとしてこれから果たしたい役割について伺いました。
島特有の事情が空き家活用を阻んでいる

島の空き家活用に関する話を聞いていると、「何かできたらいいよね」というところまでは話が進むのですが、そこから先で止まってしまうケースがとても多いと感じています。
理由の一つは、「誰に相談したらいいのか分からない」ということ。家を直すとなると、建築士や大工などの専門職の方が必要になりますが、島にはそうした方がいらっしゃらないことも多いんです。島の外から来ていただくにしても、誰に頼めばいいのか分からない。また、移動や滞在の費用負担も課題になります。結果として、話が具体化する前にそのまま時間が経ってしまう、ということが起きやすいんです。
逆に、空き家が動いている島は、例えば島にゆかりのある建築家がUターンするなど、きっかけは様々ですが、専門職の方々が出入りしているという印象があります。
こうした状況を見ていると、空き家の課題の一因は、専門職人材の不足により、空き家の所有者と専門職の接点が少ないことにあると考えられます。空き家を活用できるかも?と思ってもらうには
中村圭さんが発表された神津島の事例ですね。
島内の空き家・空き店舗を改修して、人が集まれる場所をつくる――神津島におけるこの取り組みは事業性が乏しく、すぐに収益につながるわけではありません。しかし、このように空き家・空き店舗が活用されることで、「あそこが動いたなら、うちの家も何かできるかもしれない」と、周囲の人の気持ちが少しずつ変わっていきます。その変化こそが、次の空き家活用を動かすきっかけになっていると感じました。
空き家の持ち主にとって、活用することは決して軽い話ではないでしょう。だからこそ、「まずは人が集まる」「安心できる使われ方を知る」というプロセスが、とても大切なのだと思います。15年かけて築いた信頼を、次なるステップへ

離島経済新聞社は、15年間、全国の離島を取材し、島の方々と一緒に仕事をしながら活動を続けてきました。その中で少しずつ信頼関係を築いてこられたと思っています。
これからは、その信頼を生かして、島と島の外をつなぐ役割を、より丁寧に果たしていきたいですね。島のニーズと島に関わりたいと考える人や団体の想いをきちんとすり合わせながら、ミスマッチが起きず無理のない形で出会いをつくっていくことが大切だと感じています。
島の方が「この人なら大丈夫」と思えること。島の外の方も、「この島となら、いい関係が築けそうだ」と思えること。その両方がそろって初めて、空き家も、人の関係も、自然に動き出すのだと思います。
まずは人と人との信頼から。これからも、離島メディアとして、その橋渡しを続けていきたいです。
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島の方々の不安に、どう向き合うか 神津島で10年、移住者を受け入れてきた実践と歩み

伊豆諸島のひとつ、神津島で移住定住の取り組みを続けている一般社団法人シマクラス代表理事の中村圭さん。宿泊施設の運営や空き家活用など、民間の立場から島と外の人をつなぐ活動を行ってきました。登壇パネリストとして今回のパネルディスカッションに参加した中村さんに、島に共通する課題や、神津島ならではの受け入れのかたちについて伺いました。
物件はあるのに貸せない「言語化できない不安」とどう向き合うか
新島や八丈島の話を聞いて、「島によってはそもそも空き家がない」という現実に驚きました。神津島には100軒ほどの空き家があるので、そもそも前提が違うんだなと。
神津島の場合、物件がないわけではありません。ただ、所有者さんに問い合わせがあっても、断ってしまうケースがあるんです。これは決して冷たいわけではなく、「どんな人か分からない」という不安が大きいんですね。
島では、海や自然の変化は経験から予測できます。でも人間は、何をするか分からない。その不安が、知らない人を遠ざけてしまう理由になっている。私はこれを「言語化できない不安」と呼んでいます。
ただ、一度その壁を越えて顔が見える関係になれば、島の人たちはとても温かく接してくれます。「あいつが来るならいいよ」という感じで。だからこそ移住するためには、まずは島に来て、顔を知ってもらうことが何より大事だと感じています。古さを味に 民間だからこそできること

正直、これまで行政の補助金にはあまり目を向けてきませんでした。神津島の空き家は古い物件が多くて、助成要件から外れることも多かったので。それよりも、民間として自由に動けることを優先してきたんです。
たとえば空き家を改修する時も、みんなすぐに古い設備を全部取り替えてしまうんですが、私は「昔ながらのステンレスのシンクも雰囲気があっていいじゃないか」と思うタイプで、建てた人の思いが残るものは、できるだけ残したいんです。
ただ、今回の奥多摩町さんの事例などを聞いて、考えが変わりました。資金面を考えると、限界がある。必要なところは制度も活用しながら、安全性や住みやすさを確保する。そのうえで、家の持つ良さを残していく。そういうバランスが大事だと気づかされました。
実は自分で稼いだお金を空き家改修に使ってしまって、請求書が山のように来て怒られることもあるんですけど、やっぱり楽しいんですよ。人が笑顔になっていくのを見るのが。これからは、そうした想いを持ちながら、持続可能なやり方も取り入れていきたいですね。移住だけがゴールじゃない「HAPPY TURN」に込めた思い

もし神津島に少しでも興味があれば、まずは一度、島を訪れてみてください。神津島は日本で4カ所しかない星空保護区のひとつで、月明かりのない晴れた夜には、これまでの概念が覆されるような星空が見られます。海に飛び込める場所もあって、人生で未経験のことを体験できる島だと思います。
私が運営している「HAPPY TURN」というプロジェクトには、「神津島を知ることで、あなたの人生が少しでもハッピーに転じればいい」という想いを込めています。別に神津島に住まなくてもいいんです。観光で来た人でも、この島で過ごした時間が、その人の人生を少しでも豊かにしてくれたらそれでいい。そのひとつの選択肢として、移住もあるというくらいの感覚ですね。
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「迷っているなら、思い切って飛び込んでみる」
ふるさと回帰支援センター相談員・柳沢寿樹さんが語る、移住相談のリアル
移住希望者と島をつなぐ、ふるさと回帰支援センター 相談員の柳沢寿樹さん。ご自身も移住経験者である柳沢さんに、住まい探しの壁や移住相談の現場で大切にしていること、そして移住を迷う人へのメッセージを伺いました。
移住希望者が直面する最初のハードルとは?

相談窓口にいると、「移住したいけど家が見つからない…」という方が本当に多いです。住まい探しが移住の最初の関門になっているんです。島で暮らしたいという想いがあっても、紹介できる物件が限られているので、踏み出せないまま諦めてしまう方が少なくありません。
空き家自体はあるんです。でも「どんな人に貸すのか分からないから心配」と、島の方が慎重になる場面もよくあります。そうした“人を迎えるときの不安”が、結果としてマッチングの壁のひとつになっているのでしょう。
私自身も移住した当初は住まい探しに苦労しました。最初は勤め先が用意してくれた賃貸住宅に住み、数年後にようやく戸建てを借りることができました。ところが、この戸建てが雨漏りする状態だったので、雨漏り箇所の屋根の葺き替えをはじめ、天井・床の張替え、壁への漆喰塗り、キッチンやボイラーの交換、排水設備の修繕などを行いました。もちろん修繕費は自分持ちです。
島の生活に慣れていない移住希望者にとって、住まい探しのハードルはさらに高く感じるはずです。だからこそ、空き家の状態を把握して、安心して住まいを案内できる仕組みが整えば、移住の流れはもっとスムーズに進むのではないかと感じています。空き家を入り口として移住をサポートしたい
相談の場では、島の魅力だけでなく、島暮らしの現実もきちんとお伝えするようにしています。いいところも不便なところも知ったうえで島に来たほうが、島の暮らしに馴染みやすいと思うからです。たとえば、「虫が多い」とか、「天候が荒れると物資を運ぶ船が出られずに流通も止まること」とか。
それでも私は、島の人たちによくしてもらったし、「移住してよかったな」と感じています。ですから、島に移住したかつての相談者の方から、「来てよかったです!」と連絡をいただくと胸が熱くなりますね。
今回のパネルディスカッションに参加して、空き家を“移住の入り口”として動かしていく重要性を改めて実感しました。私は移住希望者の迷いや期待を受け止めながらサポートしていますが、移住希望者のための住まいは限られているのが現状です。理想通りの物件をすぐに見つけることは難しく、移住を望む方にも島の状況に合わせて柔軟に考えていただく必要がある場面もあります。
まずは見つかった住まいで島に入って、地域の方々と徐々に関係を築いていく。そうすると、後から良い物件を紹介してもらえることが多いんです。私の移住もそうでした。今後も、こうした現実的な進め方を移住希望者に伝えていきたいですね。移住を迷う人の背中を押したい

移住には、実際にその一歩を踏み出した人にしか見えない景色があります。島で暮らしてみると、ネットの情報では分からない喜びが必ずありますし、その一つひとつが「自分らしい暮らし」をつくっているんだという実感につながります。だからこそ、まずは一歩踏み出す勇気を大切にしてほしいです。
もし迷っているなら、ぜひ相談窓口に来てください。無理のない最初の一歩を一緒に探しましょう。私たちも全力で支えていくつもりです。
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「空き家を、どう未来につなぐか」七島信用組合 八丈島支店長・宮川卓也さんの想い

新島で生まれ育ち、現在は八丈島で七島信用組合の支店長として島の暮らしを支える宮川卓也さん。金融機関の立場から島民の声に日々向き合い、空き家問題を単なる「資産」だけでなく、「人の気持ち」や「暮らしの継続」という視点で捉えてきました。空き家が動かない理由、島しょ空き家サミットに参加して得た気づき、そして島の未来に必要なことについて、伺いました。
「売れない」のではなく「手放せない」、現場で見えてきた本音

金融機関の窓口では、「空き家をどうしたらいいか決められない」という声を多く聞きます。特にご高齢の方からは、「親から受け継いだ家だから」「夏に帰る場所を残しておきたいから」といった想いをよく伺いますね。売る・貸すという判断そのものに、気持ちの整理がつかないんだと思います。
ただ、人が住まなくなった家は想像以上に早く傷みます。1~2年で床が浮いたり、雨漏りが進んだりして、結果的に住むことも貸すこともできなくなってしまう。固定資産税だけがかかり続け、「どうにもできない家」になってしまう例も少なくありません。
八丈島は不動産事業者が比較的多く、民間の物件も豊富ですが、島によっては不動産事業者がほとんどおらず、「相談する場所がない」という声もあります。私の出身である新島もそうでした。だからこそ金融機関として、家が空いてしまう前の段階で「この家をどう活かすか」を一緒に考えることが大切だと感じますね。島の外の事例に触れて見えた、空き家の新しい可能性
正直に言うと、島しょ地域の空き家の取り組みについてはある程度知っているつもりでした。でも五島列島の事例や、学生の発表を聞いて、「まだ選択肢はあるんだ」と感じましたね。
学生たちの発表内容は特に印象的で、こういう発想を持った人たちを島に誘致できる仕組みがあれば、もっと可能性が広がると思いました。島の中だけで考えるのは、正直難しい。むしろ外部から柔軟な発想を取り入れることで、空き家が“負担”ではなく、“島に関わるきっかけ”になる。その視点は、これからの島にとって欠かせないでしょう。
八丈島では、空き家を手放したいという相談があった際に、不動産事業者や司法書士を紹介したり、個別に対応を進めていますが、「どこに相談すればいいか分からない」という声が依然としてあります。行政や外部事業者と連携しながら、売りたい人、貸したい人、それぞれに合った出口を提案できる仕組みの必要性を改めて実感しましたね。島の未来を支えるのは、「人が関わり続ける仕組み」

現在は台風被害の影響もあり、まずは島の事業者が踏ん張れるよう支えることに注力しています。特に宿泊業や観光業は回復まで時間がかかるため、資金面での支援は欠かせません。
そのうえで、これからの島にとって最も大切なのは「人」だと思っています。専門的な知見を持った人や、新しい視点を持った人が島に関わり続けることで、空き家も仕事も次につながっていく。
現在、事業者の方から「こういうスキルを持った人が欲しい」というご相談をいただいた時に、すぐにご紹介できるような仕組みを整えています。
金融機関として、単にお金を扱うだけでなく、「この島で暮らしがどう続いていくのか」を一緒に考え、島と人の間に立つ存在でありたいですね。
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学生たちが真剣に島に向き合い、見出した可能性
八丈島空き家改修プロジェクトの挑戦
今回開催された島しょ空き家サミットでは、芝浦工業大学の空き家改修プロジェクトOBと東京都立大学 饗庭研究室のチームが、現地調査を経て練り上げた提案を発表しました。主体的にワークショップに取り組み、そして発表を終えた直後の両チームに、それぞれが感じた課題、今後の展望について伺いました。
オフシーズンの課題に挑む芝浦工業大学 空き家改修プロジェクトOBが描く未来
ー実際に八丈島を訪れてみて、どのような課題を感じましたか?
上栁:想像より人が少ない印象を受けました。八丈島は時期によって観光客の数に大きな差があって、夏以外の季節は極端に減少してしまうんだそうです。宿泊施設として空き家を活用する場合、この課題にどう対応するかが鍵になると感じました。
角田:港の防波堤が子どもたちの遊び場になっている様子を目にして、本来は波を防ぐための構造物が別の使い方をされていることに感銘を受けたんです。そこから、宿泊と飲食を通じて、空き家を交流の拠点とすることで新たな価値を生み出せるのではないかというアイデアが生まれました。ー提案で工夫した点について教えてください
上栁:八丈島の伝統的な織物である黄八丈のデザインをヒントに、天井の照明を考えました。
トップライトから差し込む光が黄八丈の格子模様を床に映し出すことで、島の文化を日常的に感じられる空間を目指しました。ーワークショップ発表の場での反響はいかがでしたか?
角田:提案した共同土間について、コメンテーターの方々から雨宿りや焚き火の場としての活用など、多くのアイデアをいただきました。こうした発想が次々と出てくることこそが、私たちの提案を評価していただけた証だと感じて嬉しかったですね。
ーこれから八丈島とどのように向き合っていきたいですか
上栁:また八丈島を訪れて、島の皆さんと議論を重ねていきたいです。
提案を実現していく過程にこそ、私たちにとっての学びがあり、島の未来があると思うんです。


3つのステージで考える移住支援 東京都立大学 饗庭研究室の視点
ー八丈島の視察を通じて、どのようなことを感じましたか?
穐山:私たちは今回初めて八丈島を訪れたんですが、木がうっそうと茂る中に建物が点在する独特の景観を目にして、長年にわたって台風や厳しい気候と向き合ってきた、島の方々の暮らしの知恵を感じましたね。
茂田:視察から戻った後、現地の明日葉工場が台風の被害に遭ったことをニュースで知ったのですが、取材に応じてくださった方がその工場と関係があったため、被害が自分のことのように感じられたんです。ー今回、発表された移住の3つのステージという発想はどのように生まれたのでしょう?
穐山:まず、移住者の方から地域に馴染むのに苦労したという話を聞いて、移住を地域ぐるみで受け止める必要性を感じたんです。提案を練っていく中で、移住には「来る」・「住む」・「暮らす」という3つのステージがあるのではないかという発見があり、それぞれの段階に応じた支援が必要だと考えました。
茂田:当初は10案ほどの提案が出ていましたが、整理していく過程で、移住を考える人が直面する課題を段階的に捉えることができました。シェアハウスの提案では、具体的な入居者像を設定し、一日のタイムスケジュールまで考えることで、より現実的な提案を目指しました。ー今後の展望をお聞かせください。
茂田:現地に足を運んで、自分の目で見て体験することの意義を実感しましたね。今後も地域のプロジェクトに積極的に関わっていきたいです。
穐山:私たちの提案によって物件の改修が進むのであれば、何かしらの形でお手伝いしたいです。町全体の視点も大切にしながら、これからも島と関わっていきたいですね。
島しょ地域の空き家の利活用について
島しょ地域の復旧・復興を進める中で、空き家は大切な力になります。
被災時の住まいの確保や、移住希望者の受け皿、地域のにぎわいづくりなど、活かし方次第で空き家は新たな地域資源に生まれ変わります。
「使っていない家がある」「貸せるかもしれない」「活用に興味がある」――
島の暮らしを未来につなぐために、空き家の利活用を一緒に進めていきましょう。
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