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平成30年度の入賞作品

最終更新日:令和3(2021)年9月30日

■都知事賞

□最優秀賞□ 現代長屋暮らしPDFファイル468KB)
  • (応募者)設計者:一級建築士事務所 株式会社 Studio PRANA
  • 代表取締役 林 美樹
  • 施工者:町家大工都倉
  • 都倉 孝治 他1名

■都市整備局長賞

□優秀賞□ 耕す庭の家PDFファイル639KB)
  • (応募者)設計者:スタジオ紡 建築設計事務所
  • 林 寿子 他1名
縁側のある暮らし 中と外をゆるりとつなぐ木の家PDFファイル855KB)
  • (応募者)施工者:有限会社 浜中材木店
  • 代表取締役 浜中 英治
  • 設計者:有限会社 浜中材木店
  • 浜中 賢治
みはらしだいの家 街の中でひときわ「低い」半平屋のおうちPDFファイル970KB)
  • (応募者)施工者:岡庭建設 株式会社
  • 代表取締役 岡庭 伸行
  • 設計者:岡庭建設 株式会社 一級建築士事務所
  • 池田 浩和 芹沢 佳代
□佳作□ 自然を身近に感じられる家PDFファイル696KB)
  • (応募者)相羽建設 株式会社
  • 代表取締役 相羽 健太郎

多摩産材を使った家づくりコンクール

多摩産材を使った家づくりコンクール審査委員長
職業能力開発総合大学校 名誉教授

松留 愼一郎

 東京都の奥多摩地区では、約3万haにおよぶ山林にスギやヒノキが育っており、住宅等に利用できる伐採期となっている。実際に、良質のスギやヒノキが少なからず生産されており、それを使用しての住宅等が多くつくられている。
 今回は、その多摩産材を使用した住宅を対象とした第2回目のコンクールである。応募は11件、1次審査にて5件の入賞候補作品を選定し、現地を訪問することで2次審査をおこなった。審査の結果、最優秀賞に1作品、優秀賞に3作品、佳作に1作品が選定された。
 入賞した作品は、それぞれ多摩産材の良さを活かした作品であり、以下のような特徴がみられる。まず、現代における長屋暮らしを具体化しているもの、景観を考慮した半平屋でありながら豊かな室内空間を生みだしているもの、  

多摩産材を巧みに使用しながら快適でシンプルな住宅としているもの、質の高い多摩産材が随所に使いこなされ庭と室内がゆったりと繋がっているもの、地域材を多用しながらコンパクトな総2階で適切な性能を実現したものなどである。特に、準防火地域に立地しながら、外部は土壁にモルタル漆喰塗り等にて対応し、内部には多摩産材と漆喰を多用して人に優しい空間を実現している事例は、都市部におけるこれからの長屋形式の木造住宅の可能性を示している。
 このように今回のコンクールが成功裏に終了したことをここに付記して、このコンクールが多摩産材を使用した木造住宅の建設促進をとおして、東京都の森林整備、多摩産材の利用促進、さらには、木材利用や木造建築の振興につながることを期待したい。

最優秀賞作品講評
多摩産材を使った家づくりコンクール 現代長屋暮らし
多摩産材を使った家づくりコンクール

コンクール審査委員
篠 節子

 1階を建主の住まいとし、2階を友人の入居を想定して建てられた住まいである。
 都心で高齢者の単身者が増えていく中で程よい距離を保ちながら気配を感じる共同の暮らしを現代の長屋と表している。
 東京の山の木で東京の大工の手刻み・竹小舞土壁に加え住まい手の健康に配慮して自然素材に徹底してこだわり作られている。
 設計者の仕事をよく施工している工務店との阿吽の呼吸で日本の木造建築の継承と、室内の建具・家具にまでおよんで材料の選定から細やかな詳細デザインで妥協のないつくりは温もりのある心地よい美しい空間となっている。また建設時の建主・友人たちの小舞かきワークショップは関わった人々にこの長屋への愛着を増すことになったであろう。
 狭小の敷地であるが落ち着いた上品な建物の外観と共に玄関の前の植栽で道路を行き交う人々へも安らぎを与えている。

優秀賞作品講評
多摩産材を使った家づくりコンクール 耕す庭の家
多摩産材を使った家づくりコンクール

コンクール審査委員
篠 節子

 構造材・仕上材だけでなく下地材も含め多摩産材を使っている。住まい手のご家族は加工場に構造材の手刻みを見に行き、大工の話を伺ったそうある。
 東京でただ一つ残る和紙軍動紙はあきる野市に工房がある。住まい手自ら軍動紙を手漉きし、それを障子紙に使っている。これらはご家族の良い思い出になったであろう。
   住宅の室内は漆喰とふんだんな木でできており木の香りに包まれている。2階のフリースペースは現在ご主人の趣味の部屋になっているがお子さんの成長に伴って個室にすることを想定されていた。
 庭の畑もこれからさらに手を加えていくのだろう。住まい手の植えたお茶の苗木も将来垣根になることを意図しているということ。時が経って家族の成長に合わせて変化した住まいと庭をまた見てみたい。

多摩産材を使った家づくりコンクール 縁側のある暮らし 中と外をゆるりとつなぐ木の家
多摩産材を使った家づくりコンクール

コンクール審査委員
永田 顕聖

 木製の玄関ドアを開けると多摩産ケヤキの一枚ものの式台、式台に上がり木製格子引き戸を開けると、居間・食堂・タタミコーナーの大広間となっており、これに接続してキッチン、浴室、トイレが配置されている。
 柱、梁、床、天井は全てに多摩産材が使用されおり、天井板は一枚の加工板を梁間ごとにカットし東西方向へ並べて張ることで、木目の連続性も持たせた美しい景観構成を図っている。
 1階居間の南側は、多摩産杉の丸桁に竿縁天井造りとして深い(1.5m)軒を出した縁側を設けて、庭との一体感を持たせる計らいがなされている。
 多摩産材の魅力を十分に活かした造り・仕上げがなされた住宅である。

多摩産材を使った家づくりコンクール みはらし台の家 街の中でひときわ「低い」半平屋のおうち
多摩産材を使った家づくりコンクール

コンクール審査委員
永田 顕聖

 吹抜けのリビング空間を中心に、1階は高齢の母親の動きに合わせた寝室と浴室・トイレを、2階は寝室・納戸(趣味の部屋)が機能的に配置され、お互いの気配が感じられる間取りとなっている。庭には四季を通じた植栽が施され、緑を抜けた風が大きく開いたリビングの窓から入り、吹抜けを通じて2階の各部屋を通り抜けて行く、住宅と自然が一体となった計画になっている。
 玄関部分の屋根上には『みはらしだい』と称して、家族が一息付ける場所を設けている。施主と設計者が一緒になって作り上げた理想の住まいといえる。
 住宅の内・外部において木材を果敢に使用し軸組材には多摩産材を使用している。

佳作作品講評
多摩産材を使った家づくりコンクール 自然を身近に感じられる家
多摩産材を使った家づくりコンクール

コンクール審査委員長
 松留 愼一郎

 北向斜面に建てられたコンパクトな総2階建ての住宅で、機能的かつ合理的に設計されている。1階に寝室と浴室・洗面・トイレを、2階に居間・食堂と厨房を配置しており、2階の寝室・食堂からは北面したバルコニーをとおしての展望が素晴らしく、四季折々の移ろいを感じることができる。
 柱や梁の構造材は全て多摩産材で、無垢の床材、木材があらわしの天井、家具やキッチンにも木材が多用されており、適切な温熱環境の設計と相まって、人に優しい室内空間となっている。
 耐震性や温熱環境に優れた規格型住宅でありながら、地域の木材を中心に室内に使用する人に優しい住宅で、好感が持てる。