平成27年度の入賞作品
最終更新日:平成31(2019)年3月4日
優秀賞
まちなかにある小さな土壁の家([PDF]7.7MB)
(応募者)
Studio PRANA 建築設計事務所
代表取締役 林 美樹
本と緑とゆったりカフェのような暮らし([PDF]506KB)
(応募者)
相羽建設株式会社
代表取締役 相羽 健太郎
街中の井のある暮らし
~自然と共に生きる家族~([PDF]966KB)
(応募者)
岡庭建設株式会社 Team A
代表取締役 岡庭 伸行
岡庭建設株式会社一級建築士事務所
池田 浩和 安井 敦子
佳作
山寄りの家[PDF]548KB)
(応募者)
スタジオ 紡 建築設計事務所
林 寿子
有限会社 浜中材木店
代表取締役 浜中 英治
所有者 梅原 實
「とうきょうの木・自然住宅」
茶室とピアノ室がある -楽しむおとなの家-([PDF]11.5MB)
(応募者)
一級建築士事務所WHAT
一級建築士 渡邉 剛秀
東京の木でつくる都市型二世帯住宅([PDF]985KB)
(応募者)
エム・ワイ有限会社 一級建築士事務所
代表取締役 渡辺 恭祥
総評
多摩産材を使った家づくりコンクール審査委員長
職業能力開発総合大学校教授
松留 愼一郎
東京都の奥多摩地区では、約3万haにおよぶ山林にスギやヒノキが育っており、住宅等に利用できる伐採期となっている。実際に、奥多摩の山林や製材所をみると、良質のスギやヒノキが少なからず生産されていることに驚いた。
今回のコンクールは、その多摩産材を使用した住宅を対象としたコンテストである。応募は23件と多数におよび、それに対する1次審査にて6件の入賞候補作品を選定し、現地を訪問することで2次審査をおこなった。審査の結果、優秀賞に3作品、佳作に3作品が選定された。ただし、最優秀賞は該当無しとの結果になった。
入賞した作品は、それぞれ多摩産材の良さを活かした作品であり、以下のような特徴がみられる。まず、茶室等の伝統的なしつらえを具体化しているもの、ビオトープや庭との関係など自然
との共生を取り込んだもの、内部に設けた空間に開いている都市型のもの、さらに、コンパクトではあるものの土壁や土間等の木造住宅らしい仕様を活かしているものなどである。特に、準防火地域に立地しながら、内部だけでなく外壁も土壁に板張り、軒天には厚板を使用している事例は、都市部における本格的な木造住宅の有り様の可能性を示していると言えよう。
このように今回のコンクールが成功裏に終了したことをここに付記して、このコンクールが多摩産材を使用した木造住宅の建設促進をとおして、東京都の森林整備、多摩産材の利用促進、さらには、木材利用や木造建築の振興につながることを期待したい。
優秀賞作品講評
まちなかにある小さな土壁の家
コンクール審査委員
篠 節子
構造体、内装材、外装材の全てに多摩産の材木が使われている。東京の木材で東京の大工の手刻みの伝統的構法で造られている。構造体、室内建具、家具も含めて全て木で造られており、家の彼方此方に職人がたの手の温もりを感じる。玄関を入ると杉の香りに包まれホッとした気持ちになる。土壁等の自然素材でできているため調湿性能も加わってガラス越しの太陽のダイレクトゲインだけで心地よい温かさを感じた。
この住宅は準防火地域にあるが.外壁は土壁で防火構造を確保してその外を板張りとし、軒天は告示で30mmの厚板を張ることで木の現しを可能にしている。
資源・技術で妥協のない作り方で、日本の文化を継承しながら、現代の都市の住まいとしての木造の可能性を具現化している。
本と緑とゆったりカフェのような暮らし
コンクール審査委員
篠 節子
多摩産材の利用としては180角の柱4本と210mm以上の梁22本が使われている。玄関を入ると通り抜けの土間があるのが特徴で多様な利用ができる空間になっている。1階は土間とワンルームのLDKと水廻り、2階の個室と洗面所・浴室トイレの構成でリビング南面の奥行きのある木製のデッキが室内と庭をつなげている。庭の樹々が成長してくるのが楽しみである。
室内は床に無垢の木材、家具も木で制作しており、天井の梁が現しで使われているため木の気持ち良さを感じることができる。180角の管柱は1.2階に各2本現しであるのが空間のポイントになっている。太陽熱を利用した空気集熱式ソーラーシステムを採用しており、室内はほどよい温かさで室内環境をつくっている。
街中の井のある暮らし
~自然と共に生きる家族~
コンクール審査委員
青木 茂
工務店の設計施工による家である。この工務店の一貫した家作りのコンセプトが感じられて好感が持てる。角地にありながら木製の横張りの塀や植栽は都市住宅の一つのあり方を示している。
室内は多摩産材を多用し、木造住宅の柔らかい空気感が快適な優しさを醸し出している。特にリビングは施主の住み方と建築とが快いハーモニーを感じさせられた。2階の書斎は畳のスペースが特に印象的であった。和室はお茶室としての設えと庭のビオトープとの一体感を感じ、四季折々の野鳥などの来客がこの家のもう一つの魅力となっている。
佳作作品講評
山寄りの家
コンクール審査委員長
松留 愼一郎
西多摩の山合にあるコンパクトな別荘であるが、機能的で合理的に設計されている。1階の台所や居間は土間、1階の設備部分と階段は上足で、2階寝室を含め家全体がひとつの空間になっている。木材は全て多摩産材で、特に、要に配置された大黒柱を中心とした空間は、煮物等の料理もおこなう薪ストーブと相まって、暖かく好感の持てる家となっている。
南面している畑地は、施主の手により設けられたウッドデッキにより別荘の土間とつながっており、使いやすそうである。毎週末に別荘に訪れている夫婦はこちらを本宅にしようかと考えており、いかに快適で居心地の良い建物であるかがわかる。
「とうきょうの木・自然住宅」
コンクール審査委員
永田 顕聖
住宅には奥様の趣味であるお茶室と奥様・娘様の趣味であるピアノの部屋を設けている。1階大広間には杉7寸角の大黒柱を設け、全ての柱と1階の甲乙梁、2階の小屋梁を現しとしている。各部屋や洗面所などの天井、壁、床は積極的に木質化し、各建具にも多摩産材を活用している。
また、お茶室からは、雪見障子を介して、つくばいを設けた庭と山茶花の生け垣を臨める落ち着いた雰囲気をつくっている。無垢製材造りの2階ベランダは雨掛かりとなる関係から、木の良さを維持するための定期的なメンテンスが求められる。
東京の木でつくる都市型二世帯住宅
コンクール審査委員
青木 茂
大変デザイン性の優れた住宅であり、兄弟夫婦で住む住宅でシンメトリーに配置されている。1階の一部は家の設計者のアトリエであり、来客にも好印象を持たれ、ショールームとしての機能も十分に配慮されている。2階は外部と室内で一体の使用ができ、ブランコなど子供たちの走リ回る姿がこの家の気持ちを物語っている。一部、屋根裏を利用した子供のスペースは微笑ましく、この家の最大のポイントとなっている。
プランと外観に関しては、RCとして計画されたものをそのまま木造住宅としたと説明された。1階の柱配置などへの配慮もみられるものの、もう少し木造の特徴を生かした計画であれば多摩産材をもっと生かせたのではないかと感じられた。
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民間住宅部 計画課 事業調整担当
(直通)03-5320-4936