このページの本文へ移動

「不動産取引の手引き」8 契約を解除するときは

最終更新日:令和4(2022)年2月22日

★契約は守るべきもの

契約が成立した以上は、その効力を一方的に否定することはできません。契約は本来守るべきものだ からです。それに、せっかく結んだ契約です。やめるのが本当に得策なのかを冷静に考えるべきです。
しかし、どうしても契約を解除したいという場合は、次のようなことを参考にして下さい。

1 クーリング・オフによる解除

売主が宅建業者で、売主の事務所等以外の場所で売買契約を締結した場合は、契約を解除することができます。

解除ができる場合 解除ができない場合

売主が宅建業者の場合で、テント張りや仮設小屋での販売、押しかけ訪問販売など「事務所等」以外の場所で売買契約を結んだとします。その場合は、宅建業者から書面によりクーリング・オフ制度について告げられたその日から8日以内に限り、次頁のような書面を発信すれば無条件で契約の解除ができます。

※クーリング・オフによる解除の書面での通知は、8日以内に発信すればよく、8日以内に相手方に到達する必要はありません。

  1. 1. 物件の引渡しを受け、かつ、代金を全部支払ったとき
  2. 2. 次の場所で、申込みあるいは契約をした場合
    1. イ.宅建業者の事務所(本社・支店・営業所・店舗等)
    2. ロ.継続的に業務を行うことができる施設を有する場所(分譲マンションの販売事務所等)
    3. ハ.10区画以上の一団の宅地か10戸以上の一団の建物の分譲を行う案内所(ただしテント張り、仮設小屋であればクーリングオフでやめられます)
    4. ニ.買主が、その自宅か勤務先で売買契約に関する説明を受けることを申し出た場合のその場所

【内容証明郵便の書き方・出し方】

  1. ※ 用紙は何でも構いませんが、(1枚1行20字26行と定められています。横書きの場合は、1行26字20行)「内容証明書用紙」を使用すると良いでしょう。
  2. ※ 複写での書面を3通作成(1通は相手方、1通は郵便局保管、1通は本人保管)し、封筒1枚、印鑑(万一の訂正に備えて)をもって、集配を扱う郵便局で手続します。
  3. ※ 配達されたことの証拠を残すために配達証明をつけるとよいでしょう。

2 手付放棄による解除

(1)手付放棄と倍返し

契約にあたって、買主から売主に対して手付が交付されると、その手付は原則として解約手付と解されます。売主又は買主は、その相手方が「履行に着手」するまでの間であれば、買主はその手付金を放棄し、売主はその倍額を償還していつでも契約を解除することができます。
例えば100万円の手付を支払っている場合、買主はその100万円を放棄(手付放棄)すれば契約を解除できますし、売主は受け取った100万円と同額をプラスした200万円を買主に戻す(手付倍返し)ことによって契約の解除ができます。なお、個人間の取引の場合は、手付解除できる期日を定めるのが一般的ですので注意しましょう。

(2)相手方に「履行の着手」があったときは解除できない

履行の着手とは、「客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、又は、履行行為の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」とされており、相手方に履行の着手がある場合は手付放棄による契約の解除ができなくなります。履行の提供のための単なる準備行為では、履行の着手には該当しません。
一般には、何が「履行の着手」に当たるか否かは難しい問題ですが、売主が所有権移転登記の申請を行なったとき、買主が売買代金と引換えに目的物の引渡しを求めたとき・中間金の支払をしたときなどは「履行の着手」があったと考えられています。

(3)手付解除の拒絶・妨害の禁止

宅建業者は、買主が手付金を放棄して契約を解除することを申し入れているにもかかわらず、正当な理由なく、解除を拒んだり、妨げることを禁止されています。「正当な理由」とは、売主が「履行の着手」をしている場合をいいます。

3 ローン利用特約等の条件に基づく解除

ある条件を満たさなかったときには、本契約を解除できるとする特約条項がついている場合、例えば、「買主は、融資の全部又は一部が否認されたときには、本契約を解除することができます。」とする特約条項があり、現実に融資が金融機関等から否認されたときには、このローン利用特約に基づいて契約を解除することができます。
買換え資金を購入資金に充当する場合で、購入を先行させるときには「買換特約」をつけておくことが賢明です。

4 債務不履行による解除

例えば、契約の履行日において、買主が代金の支払いを準備し、売主に目的物の移転登記・引渡しを求めたにも関わらず、売主が履行をしない場合など、契約について相手方に債務不履行があった場合(契約不適合を含む。)は、基本的に、相手方に履行を求める催告をしたうえで契約を解除することができます。
なお、相手方の債務の全部や一部が履行不能であって、契約の目的を達成できない場合には、相手方に対して無催告で契約を解除することができます。

5 消費者契約法による契約の取消し

消費者契約とは、消費者個人と事業者(一般の会社、団体など)の間で締結された契約をいいます。
事業者(売主業者など)から、重要事項について事実と異なることや不確実な事項について断定的判断を告げられたり、故意に不利益となる事実が告げられず、買主が「誤認」して行なった契約の申込みやその意思表示は取消すことができます。
また、事業者(売主業者など)が買主の住居等に訪問して契約の勧誘をし、買主が帰って欲しいと告げているのに退去しない場合や、勧誘を受けている場所から買主を退去させないことにより、買主が、「困惑」し行なった契約の申込み又はその意思表示も取り消すことができます。

6 詐欺や錯誤による契約の取消し

契約の解消に関連して、錯誤無効や詐欺による取消しなどを主張できる場合があります。弁護士など法律の専門家によく相談してみましょう。

よくある質問

疑わしい不動産取引の勧誘についてのQ&A

 以前、不動産業者から勧誘されて、土地を購入しました。購入した土地が建物を建てられないところで、売れなくて塩漬けになっていました。最近になって、違う業者からその業者が紹介する土地を買う条件で塩漬けの土地を買い取ってくれるという話がきています。また、所有する土地についてあらたに測量する必要があり、測量するお金を出してほしいと言われました。どうしたらよいのでしょうか。

 最近、消費生活センターなど、行政の窓口に「原野商法」の相談が来ています。これは売るに売れなくなった土地を買い取るかわりに、不動産業者が勧める土地を買わせて、お金を払わせ、業者は買い取るという約束を守らない。また、測量費用、整地費用、広告費等を払わせ、所有する土地の売却を進めないという類のものです。
契約する前に冷静に考え、不審な点があれば消費生活センター、免許行政庁に相談してみてください。

7 話し合いによる合意解除

契約の定めによらず、当事者間の話し合いで契約を解除する方法です。
この合意解除は、まず相手方が応じてくれるか、次いで、どういう内容(条件)で応じてくれるかなど、相手方との交渉次第ということになります。
合意解除が成立したら、その内容を書面にしておきましょう。

契約を結ぶときもやめるときも冷静に考えましょう!!